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ウイスキーが「おじさんのお酒」から激変したワケ 市場復活に導いたサントリーのハイボール秘話

東洋経済オンライン / 2024年6月30日 8時20分

ところが、2008年に入ると、徐々に現場の変化が報告されるようになる。営業担当者から「ビールの度数に近いハイボールがよく飲まれている居酒屋がある」との情報が入るようになったのだ。

そんなとき、ウイスキーが苦手な社員が放った言葉がヒントになった。「ウイスキーをジョッキで、ビール感覚で飲んでもらうのはどうですか」。当時、業界にウイスキーをジョッキで飲む発想はなかった。ハイボールの可能性を感じていた奈良部長も「これならいけるんじゃないか」と開発に取り組むことになる。

新たなハイボールを売るために、サントリーが立てた戦略はこうだ。まずはレシピ。使用するブランドは「角瓶」とし、ターゲットを若年層に絞った。ウイスキーが濃くなりすぎないよう、作り方も明確に手順を決めた。ジョッキにレモンを搾り、山盛りの氷を入れる。ウイスキー1に対し、よく冷えた炭酸水を4の割合で注ぐ。これが「角ハイボール」だ。

小さな居酒屋から少しずつ流行を作った

次はどこで売るかだ。サントリーは当時から若者に人気だった銀座コリドー街の立ち飲み屋「丸吟」を、角ハイのモデル店に選んだ。

2008年頃は、リーマンショックの影響もあり、サラリーマンが安さを求めて立ち飲み屋に集まっていたことも追い風だった。角ハイは一気に支持を集め、同店で1日100杯以上売れるヒット商品となった。

2009年にオープンした「銀だこハイボール酒場」も注目を集めた。現場で「ビールだけでなくハイボールも売れる業態にしたら面白いんじゃないか」と商談が進んだという。

ハイボールの流行はメディアに取り上げられ、「ウイスキーが、お好きでしょ」と宣伝するCM効果もあり、角ハイの取扱店は一気に広まっていく。

2009年のサントリーの調査では、1月にハイボールの認知率が31%、飲用経験率が4%だったのに対し、年末にはそれぞれ78%、26%となり、知名度が1年で大幅に上がったことがわかる。

ブームに拍車をかけたのは、2009年発売の「角ハイボール缶」。家で氷や炭酸水を用意するのは手間がかかる。缶で手軽に角ハイを楽しめるようにした商品だ。発売以降はCMも含めて「家庭で飲むハイボール」というイメージ構築を進め、家庭に浸透させていった。

2010年代以降は、角ハイで需要を取りきれなかった層へのアプローチを進めた。2010年には、より手頃な価格帯の「トリスハイボール」を提案。角ハイよりもカジュアルなイメージで、20代女性などの支持を集めた。

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