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障害者雇用未達で「社名公表」寸前からの挽回劇 法定雇用率クリアへの3年で見えた成果と課題

東洋経済オンライン / 2024年6月30日 9時0分

「自分の経験を必要としてくれた。評価されるのは純粋にうれしいし、楽しく働けている」。そう語るのは、合同面接会を経て入社した発達障害の50代男性だ。過去のPR企業での勤務歴を買われ、広報部門への配属を会社側から打診された。現在はオウンドメディアのライターとして活躍する。

男性は「長所を伸ばす、という社風が障害者雇用に合っている」と指摘する。障害者の得手不得手は明確。この男性は同時並行で物事を進められず、複数の業務を命じられるとパニックを起こしてしまう。以前の勤務先では、「なぜできないのか」と叱責され、つらい思いをしたという。

人事総務部の兼光皓生主任は「長く働いてもらうためには工夫が必要。選考中から相互理解を深めるのは、就労後に本人の能力を発揮してもらうためだ」と説明する。

アーキ・ジャパンは事業を年々拡大しており、現在は派遣社員1800人、管理部門の社員約150人の規模となった。グループ全体で約30人の障害者を雇用し、そのうち精神関連が約8割を占めるが、この3年間で退職したのは2人のみ。当初の3カ年計画どおり、2024年度中にも法定雇用率を達成できる見込みだ。

待遇面での制度設計をどうするか

現在雇用している障害者は契約社員が多い。本人たちのキャリアを考慮し、将来的には正社員へ登用していきたい思いもある。

ただ、「待遇面の制度設計が社内で追いついていない」(吉田社長)。障害特性は個人によって違うため、集中して働ける時間や成果の出し方も異なる。それをどのような軸で評価すれば公正なのか、まだ答えは見えていない。

健常者の社員との融和に課題も残る。アーキ・ジャパンでは、採用時に障害を社内のどこまで共有していいかを確認し、それを尊重している。人によっては、部署の中で一部の上司しか知らない、という事態も生じる。

精神障害者は見た目で判別できないため、言われなければ同僚にはわからない。例えば特性上、定期的な休憩を要する人の場合、周囲から「サボっている」と誤解されやすい。日常会話の中でも、健常者の何気ない一言で障害者側が傷つき、落ち込んでしまうケースもある。

「それぞれ何らかの事情を抱えているのは、障害者だろうが健常者だろうが一緒のはず。頭ごなしの否定をしてはいけない」。吉田社長はそう強調する。

アーキ・ジャパンは今後も事業規模を伸ばしていく方針で、従業員数のさらなる増加を見込む。それに比例して新たな障害者も必要となるほか、2026年度には法定雇用率が2.7%へ引き上げられる。多様性への深い理解を社員間でどう醸成していくのかも、雇用拡大の成否を左右しそうだ。

石川 陽一:東洋経済 記者

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