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ラッコが「愛情表現」で血まみれになる納得の理由 最初は「鼻でつつく」など平和的に始まるが…

東洋経済オンライン / 2024年7月1日 20時0分

一般に可愛いイメージが先行するラッコだが……(写真:maouneru/PIXTA)

海獣学者・獣医として海陸両方のさまざまな哺乳類に触れ、解剖学の知識をもつ田島木綿子氏。

そんな田島氏の新著『クジラの歌を聴け 動物が生命をつなぐ驚異のしくみ』には、動物たちの交尾の驚くべき工夫、妊娠・出産の不思議など、あまり明るみに出ないけれど実はとても面白い、繁殖・生殖の話が多く掲載されています。

同書より一部を抜粋し、3回にわたってお届けします。

第1回はラッコの愛情表現についてです。

ラッコの恋は平和に始まるが…

海の哺乳類の中で、食肉類イタチ科に属するラッコの恋は、オスがメスにちょっかいを出すことから始まる。普段、メスとオスは別々に行動しているが、メスが発情するとオスの群れに飛び込んでいく。すると、発情したメスを見つけたオスがそのメスに近寄り、鼻でつついたりしてデートのお誘いさながらの行動を開始する。

【イラストで見る】ラッコの痛すぎる「愛情表現」

ラッコの場合、体の大きいオスがモテるとか、死闘を勝ち抜いたオスだけがメスへの交尾権を獲得できるなどの壮絶な競争はないようだ。偶然出会い、繁殖のタイミングがあったオスとメスが求愛行動を開始するという、比較的平和な状況下で事は進んでいく。

メスがその気になると、オスとメスが海面で一緒に並んで浮かんでいたり、じゃれ合ったりして、しばしラブラブな時間を過ごす。穏やかに寄り添う姿はほのぼのする光景で、「やっぱりラッコって可愛いな」と思う。

ところが、このあとの展開が凄まじい。突然オスは体を反転させ、メスの背後に回ったかと思うと、後ろからメスの鼻に嚙みつく。そしてそのまま、交尾を行うのだ。

なぜ、嚙みつくのか。あんなに仲睦まじい関係に見えたのに……。

オスがメスに嚙みつく一番の理由は、交尾のときの体勢を安定させるためと考えられている。ラッコの交尾は不安定な海上で行われるため、オスはメスの動きをコントロールして確実に交尾を完遂したいのだ。

また、交尾中であっても、オスもメスも呼吸する必要がある。そこで、オスは鼻を嚙むことでメスの頭部を海面上に固定し、お互いの呼吸を確保するという独特の方法を生み出したという見方が支持されている。

しかし、鼻というセンシティブな部位を嚙むとは、お主なかなかわかっておるのぅ、と時代劇なら越後屋さんに褒められるであろう。ウシの鼻輪(鼻環)も同様なのだが、鼻を押さえられると無条件に抵抗できずにおとなしくなる動物は多い。

ネコ科動物を運ぶときに首根っこをつかんだり、ウマにハミ(馬銜)を施すのも、そうした動物の急所を活用して不動化する手段である。海上という不安定な場で確実に交尾を行うために、オスがメスの鼻を押さえて動きを封じることは理にかなっている。

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