戦後、日本が「分断国家」にならずに済んだ深い事情 「米軍による占領」と引き換えにソ連が得たもの
東洋経済オンライン / 2024年7月2日 20時0分
こうしたなか、チャーチルとスターリンは、同年10月にモスクワで会談し、戦後の東欧でのイギリスとソ連のおおまかな勢力配分を定めた。これは「パーセンテージ協定」と呼ばれ、ルーマニアはソ連が90%・イギリスが10%、ギリシアはイギリスが90%・ソ連が10%、ユーゴスラヴィアとハンガリーは両国が各50%、ブルガリアはソ連が75%・ほかの諸国が25%とされた。
この協定にローズヴェルトは参加しておらず、当事国の合意もなかったが、チャーチルの言質の下、スターリンは東欧の支配を進めることになる。
劣勢となったドイツは、ソ連内で共産党政権に反発する勢力を集めたロシア解放軍、ウクライナ解放軍などを組織するが、大きな戦果はなかった。一部のウクライナ独立主義者はナチスと協力関係を結び、これは後年、ロシアのプーチン政権による2022年のウクライナ侵攻にも影響を与える。
一方でドイツ軍に抵抗したウクライナ人も多く、1941年夏に組織されたウクライナ蜂起軍(UPA)は当初、ドイツ軍と連携してソ連軍と戦ったが、戦争末期になると独ソ両軍と戦った。
連合国が完全に優勢となった1945年2月、ソ連のクリミア半島にある保養地ヤルタに、ローズヴェルト、チャーチル、スターリンが集まり、ヤルタ会談を開く。
この席上で戦後の国際秩序が話し合われ、3人の首脳は連合国を中心とした国際連合の設立と、アメリカ、イギリス、ソ連、フランスの4国によるドイツの分割占領に合意した。
議論が難航したのが、前年のパーセンテージ協定に含まれなかったポーランドの問題だ。
戦前までのポーランドはイギリスに亡命政府を組織しており、ソ連がポーランド内で成立させた共産主義政権のいずれを正当な政府とするかで意見が対立していた。最終的に、ローズヴェルトの提案で戦後に国民投票を実施して決める妥協案にまとまった。
また、ポーランドの範囲は、カーゾン線と呼ばれる戦前の国境を変更し、東部地域をソ連に編入して、代わりに国土を丸ごと西に動かすことになった。
それから間もない1945年4月末、連合軍の侵攻によって、ドイツに支援されたイタリア・ファシスト党の残存勢力(イタリア社会共和国)は崩壊し、ムッソリーニはイタリア人のレジスタンス組織に殺害される。
ヨーロッパの西からドイツに侵攻した米英軍と、東からドイツに侵攻したソ連軍は、ドイツ東部のエルベ川流域でついに合流した。両軍の兵士は握手して平和を誓い合い、これは「エルベの誓い」と呼ばれる。
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