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ヨーロッパの港湾に「中国製EV」が大量滞留の背景 EV販売が失速、中国メーカーの輸出拡大に暗雲

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 18時0分

中国メーカーはヨーロッパ市場へのEV輸出を急拡大させてきたが、先行きに暗雲が漂い始めた。写真は中国の港で船積みを待つ上海汽車集団製のEV(同社ウェブサイトより)

「中国からヨーロッパに輸出されたEV(電気自動車)が、荷揚げ港のヤードに大量に滞留しているのを目の当たりにした」――。

【写真】欧州委員会のフォンデアライエン委員長。欧州委員会は中国製EVに対して最高38.1%の追加関税を課すと発表した

中国のEVメーカー、睿藍汽車(リバン)の海外事業部の責任者を務める鄧暁丹氏は6月7日、重慶市で開催された自動車業界のフォーラムで、5月にヨーロッパを視察した際の経験を紹介した。

睿藍汽車は民営自動車大手の吉利汽車(ジーリー)の傘下企業で、電池交換式EVの開発・生産を手がける。「欧米市場のリスクは大きい。自動車の輸出にあたっては、細心の注意と長期的な計画が必要だ」。鄧氏はそう述べ、中国メーカーのやみくもな輸出拡大に警鐘を鳴らした。

ドイツの補助金終了が痛手に

ヨーロッパの港に滞留する中国車については、実は現地メディアが先に報道している。自動車業界紙のオートモーティブ・ニュースの欧州版は4月15日、複数の自動車メーカーがヨーロッパの港で広大なヤードを借り上げて輸入車の臨時保管場所にしており、その大部分が中国車だと報じた。

この記事によれば、ドイツ政府がEVの購入者に支給していた補助金を2023年12月に打ち切り、ヨーロッパ最大のEV市場であるドイツの需要が冷え込んだため、行き場を失った輸入車が港に滞留しているという。

そんな中、ヨーロッパでは中国車への逆風がさらに強まっている。EU(欧州連合)の政策執行機関である欧州委員会は、中国製EVに対する反補助金調査を進めており、高率の追加関税を課すとみられているからだ。

(訳注:欧州委員会は6月12日、中国製EVに対して7月から最高38.1%の追加関税を課す暫定措置を発表した)

さらに追い打ちをかけているのが、ヨーロッパでのEV販売が(ドイツ以外でも)全体的に減速していることだ。市場調査会社SNEリサーチのデータによれば、2024年1月から4月までの期間にヨーロッパ市場で販売されたEVとPHV(プラグインハイブリッド車)は合計88万1000台にとどまり、前年同期比の増加率は8.6%と1桁台に落ち込んだ。

物流の余力不足も一因

とはいえ、中国車の滞留はそれだけが理由ではない。ヨーロッパの港湾や自動車物流業界は、そもそも輸入車の急増に対応できる余力がなかった。前述のオートモーティブ・ニュースの報道によれば、自動車運搬用のトレーラーが不足していることも、荷揚げされたクルマを港から運び出せない要因の1つだという。

国有自動車大手の上海汽車集団は、子会社の上汽安吉物流を通じて中国最大の自動車運搬船団を保有している。財新記者の取材に応じた上汽安吉物流の金麒・総経理(社長に相当)は、中国車の輸出の現場で生じている問題について次のように語った。

「海外の港湾の多くは、貨物量の大幅な変動に素早く対応できない。ここ数年の中国からの輸出急増で、輸入国の港では自動車運搬船の入港待ちが常態化し、荷揚げ作業が完了してもクルマの保管場所が足りない」

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月8日

財新 Biz&Tech

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