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医薬品の販売規制案にドラッグストア反発の事情 市販薬のオーバードーズ問題に有効な規制とは

東洋経済オンライン / 2024年7月2日 12時0分

現状、市販薬を取り扱う事業者にとって、規制の強化は、コストの増大や収益減をもたらす可能性が高く反発は大きい。

「オーバードーズで何人死んでいるのか」

ドラッグストア業界の制度部会での発言や提言に対して、気にかかる箇所がいくつかある。

例えば日本チェーンドラッグストア協会の森氏は、5月16日の制度部会で「OD(オーバードーズ)、ODというけれど、どのくらいの人が死んでいるのか」と発言した。真意は、多くの人が適正使用している中で利便性が損なわれることのデメリットが大きいとの訴えなのだろうが、この発言自体は「本当にドラッグストア業界は市販薬の濫用という社会問題に向き合っているのか」という疑問を持たされる。

2023年11月に大阪で高校1年生の女子生徒が死亡したケースでは、せき止め薬のオーバードーズが原因と報道されている。表面化している事例は氷山の一角であり、若年層における死亡のうち、どれが市販薬のオーバードーズによるものなのかは判別が難しいとの指摘もある。

一方、オーバードーズの広がりを数値で捉えた研究もある。国立精神・神経医療研究センターの嶋根卓也氏は、高校生を対象に5万人規模の全国調査を実施。高校生のうち約60人に1人が過去1年以内に市販薬の濫用目的の使用経験があった。

また嶋根氏による別の調査では、1年以内の市販薬の乱用経験者が65万人との推計がなされた。これは無作為に選んだ15歳から64歳までの一般住民5000人を調査したもので、過去1年以内の乱用経験率0.75%との結果から推計したもの。「これまでは分子(患者数など)の情報が多かったが、初めて分母(実際の経験者数)を算出した調査結果といえる」(嶋根氏)。

市販薬の場合は非行歴もない女性が多い

そのほかにも、日本チェーンドラッグストア協会は6月6日の制度部会に「当日資料」を提出。全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査で、薬物依存症の治療を受けた10代患者の「主な薬物」で、危険ドラッグが縮小し市販薬が増大していることに対し、危険ドラッグについては規制がされたことが背景にあり、「安易に市販薬を規制するだけでは他の成分の濫用や非合法な手段へシフトするだけではないか」との意見を示している。

これについては国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏が、「危険ドラッグから市販薬にシフトしたのではないかと推察する方もいるとは思うがバックグラウンドがだいぶ違う」と指摘。市販薬では非行歴もなく、女性が多いという特徴があるとしている。

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