後払い「BNPL」が世界で規制強化にさらされる必然 投資家から注目を集める一方で深刻なリスクも
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 8時30分
BNPLとは英語「Buy Now, Pay Later」の頭文字をとった造語で、「後払い」サービスを指す。新規上場(IPO)の準備をしていることを5月に発表したスウェーデンのBNPL事業者Klarna(クラーナ)は、アメリカでの今年最大級のIPO案件として投資家の注目を集めており、ソフトバンクグループも出資している。
今後の成長を期待する投資家も多いBNPLだが、その行方に暗雲が垂れ込めている。各国で始まった規制強化の動きだ。
アメリカは消費者保護規則を適用
アメリカの消費者金融保護局(CFPB)は5月22日、BNPL事業者は「クレジットカード発行者」であることを明確化し、貸金業サービスの消費者保護規則(レギュレーションZ)の一部を適用すると発表した。7月下旬から施行される。これにより、BNPL事業者には定期的な明細書の発行や、払い戻し、係争管理などが義務づけられるようになる。
アメリカがBNPLの規制強化へ舵を切るのは、利用者の急増によってトラブルが頻発しているためだ。CFPBも「急拡大するBNPL市場に関する調査を2年以上も前に開始したが、消費者からの苦情が後を絶たない」と指摘している。
BNPLは、その名の通り利用者が商品を購入して、あとで代金を支払えるようにするサービスだ。利用者は電話番号やメールアドレスを入力するだけで即時に商品を購入でき、その後の支払いは主にデビットカードやクレジットカードが利用される。サービスによって支払い方法などに違いがあるが、利用者に利息や手数料がかからない消費者ローンと位置づけられる。
CFPBは今回、利息や手数料なしで4回以内の分割払い返済を伴う消費者ローンをBNPLと定義し、規制の適用対象とした。
BNPLとクレジットカードの違い
従来のクレジットカードとBNPLの大きな違いの1つが「利息の有無」だ。クレジットカードの利用で利息なしの一括払いが一般的な日本と異なり、アメリカでは利用額が多い月であってもあらかじめ設定した一定の金額を利息付きで支払う「リボ払い」が普及している。
CFPBの調査によれば、アメリカのクレジットカードアカウントの3分の2がリボ払いを活用しているとされる。そうした環境の下、利息なしで分割払いが可能なBNPLが支払い手段として好まれていると考えられる。
大和総研で主任研究員を務める矢作大祐氏は「BNPLを利用すれば、FRBによる利上げの影響を受けにくくなる」と話し、消費者の間で利上げ負担の回避策としてBNPLの利用が拡大した可能性を挙げる。
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