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株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか 岸田政権の大きな政策ミスを教訓にできるか

東洋経済オンライン / 2024年7月6日 9時0分

また、防衛費増額と事実上の増税を行うことを2022年末に先んじて岸田政権が決めたこともあり、いずれ増税が強化されるのではないかとの懸念がメディアを通じて広がり、これが家計の支出行動を抑制し続けたと筆者は考えている。

仮に、大型減税などの財政政策が経済安定化政策として、2023年早々に始まっていればどうなったか。「家計の円安への不満」は和らぎ、2023年後半以降も個人消費の回復が続いていただろう。

岸田政権が、こうした政策を採用しなかった政治的な理由は、定かではない。2023年には名目GDPが600兆円近くに増えており、これに応じて「公的部門の所得」である税収も過去最高水準に増えた。

税収と企業利益は過去最高水準に増えるいっぽうで、家計部門の所得回復が遅れるのはやむをえない。ただ、円安が家計購買力を大きく目減りさせたことへの対処策として、経済安定と再分配政策の観点から、若年低所得世帯に対する広範囲な減税、給付金支給による可処分所得の底上げがベストの手段だったのは明らかだろう。

こうした対応は、いわば政府から家計への所得移転である。ただ、各種業界に対する裁量を最大限生かしたい政治勢力にとって、一方的な減税は魅力的ではないため、これらへの配慮から実現するのは難しかったのかもしれない。

結局、岸田政権の支持率停滞が続いている1つの要因が家計の購買力低下であるとすれば、景気刺激策の結果起きた円安の恩恵を、広く浸透させることができなかったと総括できる。

増税から距離を置く姿勢をとるべきだった岸田政権

こうした事態をようやく認識した岸田政権は、2023年末に可処分所得の押し上げのために定額減税を決定したが、残念ながら、判断が遅れたうえに、「増税内閣」という国民の不信を払拭させるには至っていない。もし、岸田政権が、アベノミクスの継続を主張して、故安倍晋三元首相と同様に増税からはっきり距離を置く姿勢をとっていれば、2023年にも大型減税に踏み出せたのではないか。

「たられば」、ではあるが、大規模な減税などが実現すれば円安の恩恵が広がるので、岸田政権の支持率はここまで大きく低下しなかっただろう。

政治のリーダーシップによって、経済状況に応じた必要な財政政策を機動的に発動できるが、これが実現しなかったが故に、「大幅な円安の恩恵」が広がらなかった。大型減税に躊躇した岸田政権の政策ミスを教訓にできる政治家が登場して新たなリーダーとなれば、今後の日本経済には期待できると筆者は考えている。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己:エコノミスト

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