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宝島社「身売り説」新潮社「危機説」迎える正念場 附録ブームが一服も、大量配本止められず

東洋経済オンライン / 2024年7月8日 8時0分

「通常の紙の書籍と異なり、ムック本は冊子と付録を分別して、段ボールから付録を取り出し、バッグなら金具を外してと、とにかく処分コストが高くつく」(関係者)。気付いたときには、断裁費が膨らんでいた。

そこで蓮見氏は、2022年度からテコ入れ策を断行。まず刷り部数を減らして取次への納品数を絞り込んだ。在庫処分も一気に実施し、2022年度には特別損失として棚卸し資産評価損、2023年度には廃棄損を計上。いずれも最終赤字となった。

現預金も枯渇し、2023年7月には経営していた静岡県伊東市のホテル、11月には千代田区一番町にある社屋の別館を売却した。

蓮見氏が亡くなったのはこうした構造改革の最中だった。2023年12月、急きょ社長に就任したのが雑誌『CUTiE』の創刊編集長などを務めた関川誠氏。「これまでは蓮見さんの一声ですべて決まる会社だった。関川さんは“永遠のナンバー2”というポジション。蓮見さんより目立つと潰されることもあり、関川さんは腹のうちが読みにくいが、編集哲学がしっかりとあり、社員は歓迎ムードだ」(関係者)。

社内報に記された「秘策」

関川氏の喫緊の課題は、8月に締まる2024年度決算での3期連続赤字の回避だ。女性誌『steady.』の休刊などは発表済みだが、ハードルは高く見える。

だが、関川氏には秘策があった。同氏は社内報のコラムで経営状況についてこう記す。

「子会社TJホールディングスを通じての数十年にわたるアメリカでの投資は今や膨大な黒字を生んでいる。さらに加えて巨大な円安効果も!ちょっとやそっとでは揺らぐことのない、話題の西小結・大の里の押し出しにもびくともしない強固な経営土台ができている」。

TJホールディングスとはアメリカの完全子会社で、過去は映画製作などをやっていたが、近年は株やベンチャー投資で利益を出している。同社が宝島社に特別配当を実施することで、今期は「営業損益はぎりぎり黒字化、経常損益は大幅な黒字」(宝島社)となる見込みだ。

今期をなんとか切り抜け、今後は直営通販サイトの強化や新規事業を創出し、「付録ビジネス」依存からの脱却を図っていくという。カリスマ亡き後の、難しい舵取りが続く。

新潮社にも危機説

宝島社だけではない。新潮社も危機説が流れる1社だ。文庫本「新潮文庫」、週刊誌『週刊新潮』と、文芸とジャーナリズムを軸に、350人の従業員を擁し、東京・神楽坂に本社を置く老舗の総合出版社である。

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