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ついにアニメ化「サクナヒメ」独特なヒットの裏側 小規模のインディーゲームが一大ムーブメントに

東洋経済オンライン / 2024年7月9日 12時0分

※『アクトレイザー』は1990年にエニックスから発売されたスーパーファミコンタイトル。アクションパートと街作りシミュレーションパートのふたつの要素で構成されている特殊なシステムで、日本での知名度が高い。

そして何より、「米づくりのイヤなところ」に少し触れているのが重要だと筆者は考えている。

ゲームはあくまで娯楽であり、主な目的はプレイヤーに面白さを与えることだ。意図的に不快感を与えることもあるものの、それでもたいていのゲームは楽しく遊んでもらうことを目指す。

『天穂のサクナヒメ』は確かにリアル寄りの稲作が楽しめるものの、あくまでゲームとして落とし込んだ簡易的なものである。現実ではありえない便利なアイテムも用意されているし、大変な米づくりもゲームを進めると楽になっていく。ゆえに、娯楽であることは間違いない。

一方で、前述のように本作は米づくりの苦労を語るのだ。主人公のサクナヒメはもともとやる気がないうえに、田を耕すときは途中で切り上げようとするし、苗の植え付けのときには腰が痛いとすぐ文句を言う。

仲間たちと田植えをするときにいたっては、仕事のしんどさのせいで全員が喧嘩をはじめてしまう。結局、「植えよ根付けよ」と田植え歌を歌い気持ちをごまかしながら、地道な仕事をこなすのである。

もしシンプルに娯楽を目指すのであれば、上記の要素をなくして「明るく楽しい米づくり」といった方向性もありえただろう。しかし、『天穂のサクナヒメ』はそういう選択をしなかった。なぜかといえば、米に対する感情を描くにはそれが必要だったからだろう。

とくに日本での人気が高い

食事の際、米粒を残すことがマナー違反とされることがあるように、日本人は農業従事者でないにしても米を作ることの苦労を知っているわけだ。あるいは、1粒の米に7人の神様がいるといった考えもあるように、米に何かを見出している。

つまり、日本人にとって米はただの食べ物ではなく、米農家の汗の結晶であり、あるいは信仰の対象とすらいえる複雑な存在なのである。そして、米づくりの苦労も米粒の中に入っていると考えているのだ。

『天穂のサクナヒメ』は特に日本での人気が高い。世界累計出荷本数が100万本を突破した際には、そのうちの6割が国内販売本数であったと発表されている。この国内人気は、米に対する日本人の機微を描けたからこそ得られたのだろう。本作のキャッチコピーは「米は力だ」である。この言葉にも、米に対する思いが詰まっている。

そうした世界観がアニメでどのように描かれるのか。ゲームと同様に視聴者の心をつかむことができれば、食料自給率の低い日本にとって、農業への関心も高まる絶好の機会になるに違いない。

渡邉 卓也:ゲームライター

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