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なぜ目の動きを速くしても本の速読できないのか 必要な情報をできるだけ早く、頭に叩き込む方法

東洋経済オンライン / 2024年7月10日 16時30分

私たちの目がそのように凝視と移動を繰り返しながら、正しい順序で一つ一つ言葉をインプットしていくことで、文章全体の内容の認識が生まれるのです。

これを踏まえたうえで、言葉を認識する脳と文字イメージを取り込む目が、神経を通して忙しくシグナルをやりとりしている様子をイメージしてください。

まず、目を通して文字から得られた言葉の視覚イメージが脳に送られます。そして、脳からは目に対して「動く」「止まる」などの指令が送られます。

しかし、その指令は神経を通じて行われるので、時間がかかります。脳から指令が出て目が動くまでの時間は、読書中の場合、平均0.15~0.20秒です。

目が、ある言葉を凝視して次の言葉に移るまでは0.25秒かかります。その時間の大半である0.15~0.20秒は、脳から指令が出て目が動くまでの時間なので、目を速く動かすことでは縮めることができない時間ということになります。

そしてもちろん、脳が目に指令を送るのにかかる時間は、目の筋肉をどれだけ鍛えたところで変わるはずもありません。つまり、いくら目の動きを速めても、指令にかかる0.15~0.20秒は縮めることができないのです。

ということは、たかだか0.25秒の凝視を0.15秒にするのが限界ということになります。

したがって、目を動かす速さのトレーニングをいくら頑張っても、読書の速さは2倍にさえならず、通常の10倍や15倍の速読は不可能なのです。

読書中の8割は文字を見ていない

読むスピードを大きく左右しているのは、目の動きのスピードではなく、目から入ってくる文字情報を、脳が解釈するスピードです。

人が黙読しているときの視線を、コンピュータで詳細に追跡すると、読書中のほとんどの時間、目は文字を見ていないことがわかりました。

読書をしているとき、目を使って新しい文字情報をインプットしている時間は読書時間のごく一部で、読書時間のおよそ8割は、脳が言葉の意味を理解するのに費やされているということになります。

ようするに、読書の鍵は目の動かし方ではなく、脳の理解力が8割なのです。

これまで良しとされてきた速読の方法が科学的に検証した結果、不可能であることがわかりました。では、驚異的な速読術を身につけた人たちは一体何をやっているのでしょうか。それはズバリ、「つまみ読み」です。

効果的な「つまみ読み」のコツ

実際に、速読者の目の動きは、全体を捉えることなく、ごく一部の文字情報にしかフォーカスしていないことがわかってきています。

最新の科学が明らかにした効果的な「つまみ読み」のコツを、ここでは1つだけ解説しましょう。

突然ですが、クイズです。

いつものあなたのスピードで全部読むと10時間かかる本があります。しかし与えられた時間は5時間です。

半分の時間で、できるだけ本の内容をインプットするためには、次のどの「つまみ読み」の方法が良いでしょうか?

A 同じスピードで全体の前半だけ全て読む 
B 同じスピードで全体の後半だけ全て読む
C 同じスピードで全段落の前半だけ読む

どれもあり得そうですが、この中のどれか1つが飛び抜けて効果が高いという結果が出ています。

答えは、Cです。

文章はおしなべて前半のほうにキーになる言葉や考えが出てきます。読むべき材料の各段落の前のほうだけを「つまみ読み」しておくと、全体の内容を素早く把握することができるのです。

星 友啓:スタンフォード大学・オンライン高校校長 哲学博士

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