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老舗アパレルに「旧村上ファンド」登場で再び波乱 巨額の「株主還元」を突如表明も、暗雲は深まる

東洋経済オンライン / 2024年7月10日 8時30分

旧村上ファンド系の投資会社である南青山不動産は以前から1.3%のダイドー株を保有していたが、4月末から6月にかけて市場内で買い増していた。7月4日に提出された大量保有報告書で、共同保有者と合わせて5.14%を保有していることが明らかとなった。

すでに6月の総会前の段階で、村上世彰氏から面談の申し入れがあり、複数回議論をしたという。株主還元強化に関するダイドーのリリースには「村上氏は当社の業績や今般の状況などを憂いている」とあるのみで、具体的な交渉の中身には触れていない。

だが、こうした場で大幅な還元強化を話し合ったとみられる。総会直前の厳しい時期に、ダイドー側が守勢に回らざるをえなかったことは想像にかたくない。関係者によると、会長就任前の山田氏も村上氏とやり取りしたという。

還元に必要な巨額資金をどう捻出?

なお、総会の議決をめぐって争ったSC側の要求に「還元強化」は含まれていない。SCは7月8日、「今般の発表内容については弊社から提案したものでも事前に同意したものでもない」とする声明を発表した。還元強化による短期的な株価つり上げを求めているわけではないことを強調する意図があったとみられる。

ダイドーによると、100円配当と50億円の自己株買いをするためには合計130億円超の資金が必要だ。ダイドーの自己資本(146億円)とほぼ同程度という巨額の株主還元をどのように行うのか。

ダイドーは2023年に本社ビルを売却したのちに賃貸用不動産を2件取得しており、これらを売却することで還元の原資にする予定だという。取得価格は90億円程度だったとみられ、同程度の資金になる見込みだ。

SCは230億円ともいわれる多額の含み益を抱える小田原市のショッピングセンターの売却検討を求めていたが、ダイドーは売却しない方針を維持した。株主総会に先立ち、初めて公表した中期経営計画でも賃貸用不動産の売却については触れたものの、ショッピングセンターは保有し続けるとした。

株主還元自体は可能だとしても、今後の成長戦略に対する暗雲は深くなった。

中計で目指す2027年3月期の営業利益は15億円。このうち6億円をM&Aを通じて取得した新規事業などで稼ぐとしている。そのための買収資金は少なくとも数十億円が必要だ。前出の不動産売却で得られる資金を買収に使うことができないならば、ほかの資金調達手段を探す必要がある。

資金調達の具体的方策は見えず

その具体的な方策は見えないままだ。山田氏は「詳細は話せないが、(還元強化は)さまざまな試算を行った結果だ」と話すが、ショッピングセンター売却などさらなる合理化を今後迫られる可能性がある。

本業であるアパレル事業の立て直しも順調に進むのか不透明だ。あるアパレル業界関係者は山田氏について「彼はあくまで“コンサル”。事業経験が豊富なわけでもなく、現場に入り込んで立て直すことは難しいだろう」と手厳しい。

本業の不振で株価が振るわない間に投資ファンドに株式の多くを握られ、揺さぶりをかけられるダイドー。不動産などの換金可能な資産を吐き出したのちも、株主との緊張関係を強いられる可能性は高い。長いトンネルの出口はまだ見えそうにない。

高橋 玲央:東洋経済 記者

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