紫式部「夫亡くし娘は病」それでも強く生きれた訳 悲しみに暮れた式部の心の拠り所となったもの
東洋経済オンライン / 2024年7月13日 11時30分
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は夫を亡くし、娘が病になった紫式部のエピソードを紹介します。
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夫が亡くなった後に、娘は病に
長保3年(1001年)、夫・藤原宣孝を亡くした紫式部。未亡人となって間もない紫式部を口説こうとした男性もいましたが、紫式部はそれを断固拒否。宣孝との間に生まれた娘・賢子の教育に力を注いだものと思われます。
その頃の紫式部が詠んだと思われる歌には「若竹の生ひゆく末を祈るかなこの世を憂しと厭ふものから」というものがあります。
そしてこの歌の詞書には「世を常なしなど思ふ人の、幼き人の悩みけるに、から竹といふもの瓶に插したる、女ばらの祈りけるを見て」とあります。
「世を常なしなど思ふ人」(世の無常を感じている人)というのは、紫式部自身のことです。突然夫を病で亡くして、人生や人間の儚さというものをしみじみと感じ入る紫式部。
しかし、その側では、幼い我が子・賢子が病気で苦しんでいました。病気平癒のまじないでしょうか、竹を瓶に插したものを前に、紫式部の家の女房たちが祈祷をしている。そういった情景が、この詞書から浮かんできます。
紫式部はその情景を見て、先に述べた「若竹の生ひゆく末を…」の歌を詠んでいますが、その内容は「娘の病が治るよう、無事に成長するように私も祈っている。しかし、その一方で、私の心には、世の中はいつどうなるかわからない、世を厭う想いがある」というものです。
子どもの成長を願いながらも、世を厭うという、世間から離れたい気持ちを紫式部は抱いていたのでした。
夫の急死や、疫病により京中の人々がバタバタと死んでいったことも、その心情の背景にあると思われます。
そのほかに、この頃の歌だと思われるものには「数ならぬ心に身をばまかせねど身にしたがふは心なりけり」「心だにいかなる身にかかなふらむ思ひ知れども思ひ知られず」というものもありました。
この歌の詞書は「身を思はずなりと嘆くことの、やうやうなのめに、ひたぶるのさまなるを思ひける」。
つまり「自分の人生が思い通りにならなかったと嘆く気持ちが、だんだんと静まってきたかと思うと、また急に募ってくる」と言っているのです。
そして「私はつまらない者だから、どうせ自分の思うようにはなれないとわかってはいるが、しかし、いざそうした悲しい境遇になってみると、自分の心はそれに引かれて、悲しみに沈んでいく」「どのような身の上になったならば、心がそれに満足するのだろうか。満足した境遇になれそうにないことはわかっているが、自らの心の満足を求める想いもあり、諦めがつかない」と詠むのです。
「自分の人生思い通りにならなかった」
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