1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「臭い」の言葉にも負けず、「し尿収集」職員の奮闘 「災害時のトイレ対策のスペシャリスト」になる

東洋経済オンライン / 2024年7月16日 11時0分

作業は3人体制で行われる。これは詰まった汚物が吸い込まれ始める際にホースが暴れる(「走る」)ときもあるため、人にあたったり周辺の器物を損壊させたりしないように、足で踏みつけてしっかりと固定する必要があるからだ。

3人は多いと思うかもしれないが、安全作業で細やかな配慮を施しながら収集するためには必要な人員だ。

実際、ホースは重くて硬く、思うように取り扱えない。手元が狂うとホースに残る汚物が飛び散り、周囲を汚してしまったり自らも汚れたりする。慎重に便槽の蓋がある箇所まで伸ばしていき、吸引作業へと移っていく。

収集業務は便槽にホースを入れるだけに見えるかもしれないが、細やかにホースをコントロールする技術が必要だ。

便槽の中にホースを入れ、し尿の表層と同じ高さにキープするが、吸引力が強いため結構な腕力がいる。かなり速く吸引されるため、表層の位置が下がっていくのに合わせて高さをキープしなければならない。

吸引が弱くなったと感じたときは、いったんホースを汚物から外し、空気を吸い込ませてホース内の汚物をタンクへ送る。その際には「ゴロゴロゴロゴロ」という音が響いてくる。

やがてタンクの中に汚物が入ると「スーーー」という音に変わる。この「息継ぎ」が終われば再度、汚物の表層にホースを近づけて吸引作業を続ける。

生理用品やカイロが入っていることも

便槽にはし尿やトイレットペーパーがあるが、生理用品や冬場はカイロが入っていることもある。カイロは吸い込めないため、汲み取りの依頼者に処理を依頼するが、対応が難しい場合は別途収集することもある。

また、固形物が大きくホースに吸い込まれないときも大変だ。

ホースの口の角度を変えて吸い込ませると一気に流れ込むため、ホースが暴れる現象が起こる。吸引者が「走るよー」という声をかけ、残りの2人はしっかりとホースを固定し、器物の損壊を防ぐ。

3人のチームワークにより収集作業が続けられていく。

きれいにし尿を取ることを心掛け、借りた水を便槽に流し込み、固形物が残らないように全て吸い取る。留守中に収集するときは、収集が完了した旨を伝えている。たくさんの細やかな配慮を施しながら作業を行っている。

バキュームカーのタンクがいっぱいになってくると「し尿等下水道放流施設」に向かい、そこに汚物を降ろして再度現場へと向かっていく。

「臭い」の声、屈辱的な体験を重ねて

バキュームカーには脱臭機を装備しているが、作業では臭気を伴うため子どもに限らず大人からも「臭い」と言われたり鼻を摘ままれたりする屈辱的な経験を前田氏は重ねてきた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください