1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

サンリオ「2代目社長」で上場来高値に達した必然 構造改革で復活、「時価総額1兆円」も射程圏?

東洋経済オンライン / 2024年7月17日 8時30分

そして3つ目のポイントは、長年の課題だった“ハローキティ一本足打法”からの脱却を前進させたことだ。

好業績を維持していた2014年3月期には、海外売上高のうちハローキティの割合が9割超を占め、会社全体が欧米でのハローキティブームに依存する体質となっていた。

実際、2010年頃にはレディー・ガガら海外セレブがキティグッズを愛用するなどして一大ブームが起き、欧米でライセンス商品のロイヤリティ収入が大きく伸びた。ところがその後、他社のキャラクターがヒットすると、ウォルマートなど現地の大手小売店の陳列棚が一気に取られ、業績も下降に転じた。

仕込んだものが想定以上の成果に

こうした反省も踏まえ、朋邦社長の下では、シナモロール、マイメロディ、クロミといった他のキャラクターのブランド力を重点的に強化。1つのデザインに複数のキャラクターを使ったり、1つの商品をキャラクターごとに展開したりする「複数キャラクター展開」にも取り組んだ。結果的に、2024年3月期の海外売上高の構成比は、ハローキティが5割、複数キャラが19%、その他のキャラクターが31%と大きく変化した。

一連の施策の効果もあり、利益率の高いライセンスビジネスによるロイヤリティ収入は2021年3月期に157億円だったのが、2024年3月期には398億円にまで成長した。

朋邦社長は3年間での改革について、「(コロナ後の需要回復など)外部要因の追い風もあり、仕込んできたものが想定以上の成果を出した。それによって改革に対する従業員の信頼度が大きく上がり、また次の改革につながるといういいサイクルができた」と振り返る。

今後の成長に向けては、グローバル展開を加速させる。

インドなどサンリオキャラクターがまだ進出していない地域に進出するほか、マーケティング、ブランディング、営業を連携させる部署を立ち上げ、グローバルでのキャラクターのブランディングをコントロールする。全世界で展開できるライセンシーとも組んでいく方針だ。

キャラクターの活用先の多様化もカギとなる。

例えば新規事業として、幼児向けの英語教材などを展開するエデュテイメント事業を開始。これまでライセンス許諾の形が中心だったゲームは、自社パブリッシングも視野に、国内外のスタジオとの共同開発によって6本以上のリリースを目指す。

ほかにも、アリババグループのアリフィッシュとの共同制作アニメを2025年に公開予定、テーマパークではハーモニーランド(大分県)のエンタメリゾート化も検討している。これまでグッズ中心だった消費者との接点を広げていくことで、収益源を多様化し、IP企業からグローバルエンターテイメント企業へと進化を目指す。

成長に向けて人材確保の課題も

ただし、一朝一夕の進展は難しい。とくに海外や新規事業の拡大には人材面が課題になるだろう。

朋邦社長自身、「グローバルでブランドをコントロールするプロデューサー人材は集めていかないといけない」と指摘する。IP企業がこぞってグローバル展開を目指している環境下、そうした人材は取り合いになる可能性もある。

サンリオは5月に公表した3カ年の中期経営計画で、M&Aや資本提携などに500億円の投資枠を設定しており、外部リソースも活用した機動的な立ち回りが必要となりそうだ。

2023年3月期の本決算後には「時価総額1兆円」という数値目標も掲げた。老舗IP企業からエンタメ会社へと進化を遂げ、株式市場のさらなる期待に応えられるか。ここから2代目社長の真価が問われることになる。

田中 理瑛:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください