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核のごみ処分、「北欧モデル」は幻想に過ぎない 日本と同じく、非民主性が問題視されている

東洋経済オンライン / 2024年7月18日 8時50分

最終処分場の立地が決定している事例として、フィンランドとスウェーデンがある。この両国の事例について、日本ではしばしば、「民主的に最終処分場を決めることに成功した事例」として紹介されてきた。

フィンランドでは、オルキルオト最終処分場での受け入れを、立地自治体となるエウラヨキ市の議会が2000年1月に決定し、2001年にフィンランドの国会が最終処分場計画を承認した。

この決定プロセスについて、「原子力環境整備促進・資金管理センター」の専門家である佐原聡氏は『月刊エネルギーレビュー』の2022年8月号で次のように評している。

「処分場プロジェクトの早期において、市民参加を得て計画の方向軸を決定した事例である。EIA(筆者注:環境影響評価)という枠とルールがあることで、人々が最終処分に対する賛否を決めきれずとも、評価項目に対する意見や要望の形で声に出せるという特色が浮かび上がる」

「民主的な意思決定を目指した自治体とポシヴァ社(注:最終処分場計画実施企業)の取り組みは功を奏したと言えよう」

環境影響評価で住民の意見表明機会を保証することで、民主的に決めることができたというのである。

2022年1月27日スウェーデン政府は、最終処分場を同国南部のフォルスマルク市に建設する計画を承認した。

この決定にいたるプロセスについて日本経済新聞(2019年12月21日)は、「(フィンランドと)共通するのは徹底した透明性だ。疑惑を持たれないようにする仕組みをつくり、時間をかけて信頼を醸成した」と評価した。

日本で最終処分場選定に取り組む原子力発電環境整備機構(NUMO)も、北欧両国での処分場選定を参考にしており、前出ポシヴァ社とは、「パブリックアクセプタンスと信頼性の形成」など、住民対策の取り組みも含めた協力協定を結んでいる。 

民主的とは呼べない意思決定の実態

「民主的決定の成功例」があるのならば、日本でもそれを参考にして立地選定を進めればいい、と思いたくなる。しかし、日本では知られていないが、両国でも、意思決定プロセスの「非民主性」が問題視されている。

フィンランドの市民団体は、最終処分場の選定について、「民主的な公開討論なしに進められる事案になっている」との懸念を表明している。

最終処分場の立地自治体となるエウラヨキ市で反対運動に参加した住民は、賛成派の住民から繰り返し深刻な脅迫を受けたという。その女性は「脅迫されたことを訴えても役所は真剣に取り合わず、最終処分場に反対していた多くの住民は、近隣のラウマ市に引っ越していった」と述べている。

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