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「トランプは神」共和党大会で見た異様な熱気 トランプが「神がかった」演出をする場面も

東洋経済オンライン / 2024年7月21日 8時0分

暗殺未遂事件について尋ねると即座に、「それは神。神が彼を救ったの」と答えた。

人工妊娠中絶反対グループ「プロ・ライフ・ウィスコンシン」理事長のダン・ミラー氏は、「民主党と左派は、トランプの命を奪おうとした。こうなったら、トランプを11月に勝たせるしかない」と話す。彼の話を聞くと、トランプ支持者の一部は、事件は民主党の仕業だと思っていることがよく分かる。

「物価が上がりすぎてシングルママには辛い」

バイデン民主党政権に対する強いフラストレーションも、トランプ氏の優勢を後押しする。

「バイデンは、アフガニスタン撤退は成功だったと主張している。多くの命が奪われたのに」

「バイデン政権の下、物価が上がり過ぎてシングルママには辛い」

大会ステージで目を潤ませて訴えるスピーカーもいる。フロアからはブーイングが起こり、怒りやフラストレーションが会場を包む。

元警官・消防士のデイブ・ウィロビー氏は、会場へのゲートで「民主党は、すべてを台無しにした」と書かれた黒いTシャツを着て立っていた。手にしたプラカードには「トランプに神のご加護を!」とある。

「民主党とその政策が、大嫌いだ。国境を越えて入ってくる不法移民の問題は、国家の安全保障に関わる。バイデンは、すぐに犯罪を起こす彼らを入れっぱなしだ。アメリカが世界の警察である必要もない。警察予算の削減も反対だ。民主党政権下、愛する自由が失われている!」と語調は荒い。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると19日現在、トランプ氏の支持率が46.6%、バイデン氏の42.3%に4.3ポイントと大きく差をつけている。

共和党大会が開かれているウィスコンシン州を含むスイング・ステーツ(激戦州)7州すべてでトランプ氏の支持率が、1.6〜6.2ポイントもリード。こうしたデータも、「ほぼトラ」「確トラ」と呼ばれる優勢を物語っている。 

「共和党は、トランプの下、今までになく強く、団結している!」と副大統領候補に選ばれたJ・D・バンス上院議員は、受諾演説で強調した。最終日に向けて、「勝利」に近い「滅多にない」共和党大会を印象付けた。

いいところがまるでないバイデン陣営

一方、バイデン氏にはいいニュースがない。6月末の大統領候補テレビ討論会で、どもり、発言のつじつまが合わず、センテンスを終わらせられないという大統領として惨めな結果で民主党を混乱に陥れた。

7月初旬の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議関連会合では、ウクライナのゼレンスキー大統領を「(ロシアの)プーチン大統領」と紹介。名誉挽回のためのテレビインタビューでは、相変わらず危なっかしい。さらに18日には、選挙戦で訪れていた西部ネバダ州で新型コロナウイルスに感染しており、デラウェア州の自宅に戻った。

アメリカメディアによると18日、バイデン氏は撤退の要請に「受け入れようとする」姿勢を示し始めた。チャック・シューマー上院院内総務など民主党の重鎮が、選挙戦から辞退するように働きかけているという。民主党の主な下院議員もバイデンが再選を諦めるように働きかけている。バイデン氏は崖っぷちに追い詰められた形だ。

トランプ氏は受諾演説のクライマックスをこう締めくくった。

「ウィン、ウィン、ウィン!」

会場全体からも拳を振り上げ、叫ぶ代議員が続いた。

「ウィン、ウィン、ウィン!」

2024年の共和党大会は、トランプ氏の暗殺未遂事件直後となり、前例にない「神がかった」内容となった。右耳にガーゼをしたトランプ氏の下に、共和党は団結して立ち上がった。トランプ氏は、演説終盤で満足げにこう言った。

「この大会は、共和・民主両党を見ても、過去にない最高の大会になった」

津山 恵子:ジャーナリスト

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