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羽田空港で無人車両実験、人手不足の解消へ一歩 ANAとトヨタ共同開発の自動運転車両を公開

東洋経済オンライン / 2024年7月22日 8時30分

業務の分担も明確だ。貨物の選別や積み下ろし、機体への積み込みなど、状況判断や細かな操作が必要な作業は従来通り人が担当している。さらに、安全面を考慮し、自動運転車両は飛行機に直接寄せて停車することはせず、少し離れた地点で荷下ろしを行う。そこから飛行機までは人が貨物を運ぶという役割分担を採用している。

豊田自動織機の深津史浩氏は「これまでの120の搬送区間で無事故を達成している」と述べ、現時点での安全性の高さを強調している。

自動運転システムの核となるのは、高精度な現在地把握技術だ。車両はGNSS、LiDAR、磁気マーカー、映像解析という4種類の技術を組み合わせて車両の位置を特定している。誤差150ミリメートルの精度で目的地点に停車することができる。自動運転の最高速度は羽田空港の制限速度に合わせて時速15キロメートルとなっている。

技術は進展もコスト面は課題

自動運転を実現する中で課題となったのが、有人運転との混在だ。羽田空港の制限エリアの道路は片側2車線があり、トーイングトラクターやバスなど、車両がひっきりなしに行き交う。こうした交通量が多い空港での自動運転は、世界でも類例が少ないという。

メーカーの豊田自動織機は流れを妨げずに滑らかに運行できるかに苦心した。深津氏は「安全のためには止まらなければいけないが、必要以上に車両が停止してしまうと渋滞を引き起こしたり、航空機の遅延につながってしまう。そのあたりは非常に気を使いながら開発を進めた」と説明した。

将来的な導入に向けては、コスト面の課題も浮かび上がってくる。ANAの森氏は「自動運転車両の導入費用が大幅に上がるのは確かだ。現状では費用面よりも人手不足対策としての導入を優先している」と述べている。将来的には自動運転装置の簡易化や、複数台を1人で管制する体制の整備によって費用面での課題は緩和されていくものと思われる。

トーイングトラクターの自動運転化と並行して進められているのが、電動化の取り組みだ。通常のトレーラーはエンジン車だが、電動車も今少しずつ入れており、現在4台の電動車両を導入している。自動運転車両も電動化された車両だ。

自動運転トーイングトラクターの導入は、航空業界が直面する人手不足という課題に対する解決策の1つとなりそうだ。技術面での進展は著しいものの、コスト面や既存の業務フローとの調整など、実用化に向けてはまだ課題も残る。この技術がどのように空港の風景を変えていくのか。今後の展開次第で、この技術が空港の景色を変えていくかもしれない。

石井 徹:モバイル・ITライター

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