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日本の"現場"を殺した「4なし経営」の重すぎる罰 「賃上げも人員補充もなし…」経営の責任は?

東洋経済オンライン / 2024年7月26日 10時30分

これは、負荷を背負いきれなくなって社員が辞めてしまうという、最悪のシナリオにもつながっていく。

3つめは「上がった利益は内部留保や配当に回し、給与を上げてこなかった『賃上げなし』」経営である。

【③賃上げなし】利益は「内部留保」や「配当」に回し、「給与」を上げなかった

OECD主要加盟国における2021年の労働時間当たり人件費を見ると、日本は30.37ドルと主要先進国中最低で、韓国(30.68ドル)をやや下回り、チェコ(28.83ドル)を若干上回る程度の水準である。

フランス(52.53ドル)、ドイツ(51.49ドル)、アメリカ(48.88ドル)などとは比較にならないほどの差をつけられている。

アメリカの人事コンサル大手であるマーサーの調査によると、2023年の専門職の平均年収は、アメリカが16万2717ドル、シンガポールは12万6456ドルである。それに対し、日本は7万5317ドルにとどまる。

アメリカとは2倍以上の差をつけられている。これでは優秀な人材の流出が止まるはずもない。

多くの日本企業は「低賃金・低生産性」という状態

主要先進国の労働分配率を見ても、日本はアメリカに次いで低い状況だ。しかし、アメリカと日本ではその背景は大きく異なる。

アメリカは労働時間当たり名目GDPが他国に比べて高いにもかかわらず、労働時間当たり人件費は他国並みにとどまっているため、低い水準になっている。

それに対し日本は「生産性は低いけれども、それ以上に人件費が低いために労働分配率が低い」という状態にある。

つまり、「低賃金・低生産性」という縮小均衡が続いているのである。

4つめは「価値に見合う価格改定を行ってこなかった『値上げなし』」経営である。

【④値上げなし】「価値に見合う価格改定」を行ってこなかった

賃金を上げたり、社員の休暇取得を進めたりしようとすれば、当然、企業収益を圧迫する。コスト増に対抗するためには、価格転嫁を進めなければならない。

しかし、この20年、日本企業は価格転嫁には及び腰だった。

コストに対する販売価格の比率を示す「マークアップ率」 を見ると、この20年まったく上がっていない。

コストの上昇分が消費者物価にどれだけ反映されたかを示す転嫁率を見ると、日本の製造業は72%、サービス業は29%だった。

それに対し、アメリカは製造業78%、サービス業は100%と、コスト増が価格転嫁で吸収されている。

日本は企業の大小を問わず、コスト上昇を価格に転換しようとする動きがきわめて鈍い。

デフレ期が長く続き、コストを価格に転嫁するのではなく、コストそのものを削減し、しのごうとする考え方が染みついていた。

「現場力の再生」なくして「日本の再生」はあり得ない

こうした「縮み志向の歪んだ経営」が、20年にわたり継続されてきた。

それらはすべて現場への過度な圧力として、現場を痛めつけ、消耗させ、現場力を減衰させていった。

そこには「現場力への過信」もあったかもしれない。

「うちの現場だったら、なんとかするだろう」という経営陣の甘えもあった。

しかし、その「ツケの代償」はきわめて深刻な形で表出している。

これからの日本企業は、このような経営を改善し、マイナスから立て直して、「より高次の現場力」を目指していかなければならない。

その道のりは果てしないが、「現場力の再生」なくして日本企業の再生はあり得ない。

遠藤 功:シナ・コーポレーション代表取締役

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