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「兄がゴミ屋敷で死亡」あまりに過酷な片付け現場 疎遠になっていた家族が部屋で孤独死していたら…

東洋経済オンライン / 2024年7月27日 10時0分

二見氏がはじめて孤独死の現場に立ち会ったのは約10年前。身寄りのない老人が一人で住んでいた部屋だった。怖さや悲しさよりも臭いに対する抵抗が圧倒的に強く、ほかに何も考えられなくなったという。

「あの臭いだけはほかに例えようがないんですが、とにかく脂っこくて粘っこくて、粘膜にまとわりついてくるんです。初めて孤独死の現場に入ったスタッフは、家に帰って夜ご飯を食べているときもずっとその臭いがしたって言いますね。酸っぱさや甘ったるさはないんですが、ツンと辛いときはあります。ご遺体によって臭いも変わるんです」

人が亡くなっているとはいえ、悲しんでいる余裕はない。依頼主の目的はあくまで部屋をきれいな状態に戻すことである。現場では片付けを始める前に、まずは遺体があった場所を確認しなければならない。

「絨毯の上で亡くなられていた場合などはまるでそこに人の影があるように、人の形に体液が染みています。そして、どこまで体液が染み込んでいるかをチェックします」

遺体の腐敗は死後72時間以内に始まるとされている。5日目までに体内の細菌が増殖することでガスが発生し遺体は膨張。以降、皮膚や組織が液化して体液が漏れ出す。その体液の臭いはとても強い。

「体液を踏んでしまうと臭いが靴の裏にこびり付いてしまいます。その状態で歩き回れば部屋全体に臭いが付いてしまいますし、僕らはゴミや荷物を外に運び出すわけですから、下手したらマンション中がその臭いになってしまうんです。だから、はじめに遺体の場所を確認して、体液を踏まないようにしないといけないんです」

遺体があった場所を把握したら体液が染みた部分に薬剤をかける。すると、「シュワシュワ~」という音を出しながら染みた部分がふやけてくる。雑巾で拭き取ればある程度の臭いは取れるそうだ。

浴槽で亡くなった現場がもっとも“過酷”

孤独死の現場でもっとも過酷なのが、浴槽で亡くなっていたケースだ。考えられるのはまず自殺。この場合は先に挙げた例と同じ手順で体液を拭き取れば済む。

しかし大変なのは、お湯に浸かった状態で突然死を遂げた場合だ。イーブイはその現場に出遭ったことはまだないというが、もちろん処理の方法は心得ている。

「変色しているので見た瞬間にわかるはずですが、湯船にたまった水には体液が混じっています。仮にその状態で湯船の栓を外してしまったら、体液が排水溝を駆け巡ってマンションの全部屋がその臭いになってしまうんです。だから、ドロドロになった水をバケツやらポンプやらを使ってすべてくみ上げないといけないんです。その作業をしたことがある同業者は『二度とやりたくない』と言っていました」

もし浴槽の栓を抜いてしまったら……。マンションのオーナーや管理側の身になってみると想像するだけでも恐ろしい。本当にしゃれにならない。

この部屋で亡くなった兄の体液を適切に処理した後、まずは動線を確保するために玄関周りのゴミから外に運び出していった。

二段ベッドを解体すると一気に空間は広くなり、2時間半足らずで部屋の中は空っぽになった。依頼主である妹はとにかくその速さに驚いていた。それほど兄が住んでいたゴミ屋敷の印象がセンセーショナルなものだったのだろう。

【写真】妹は部屋に入り言葉を失ったーー兄が孤独死した部屋を片付け【ビフォーアフターを見る】(28枚)

國友 公司:ルポライター

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