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「クリミア上陸作戦」で停戦交渉狙うウクライナ 秋に向け軍事攻勢へ、力の立場でロシアへ呼びかけ

東洋経済オンライン / 2024年7月30日 9時0分

もちろんこれはウクライナが描くシナリオであり、ロシア側がこの条件で交渉に応じる可能性は高くはないかもしれない。しかし、ウクライナにすれば、ロシアが交渉に応じなくても別のメリットがある。

とくにトランプ氏が当選した場合、ウクライナに領土で譲歩を迫り、ロシアとの早期交渉解決を押し付けてくるのではないか、との観測もあるからだ。

ゼレンスキー政権としては、ワシントンに対し交渉解決を図ったという一種のアリバイ工作をして軍事支援の継続を確保したうえで戦争を続ければいいだけだ。

他方で「もしトラ」の場合でも、トランプ政権が上述したような譲歩を迫ってこず、ロシアとの戦争継続を支持する可能性もあると筆者はみる。

戦況はロシア軍にとって不利に

一方、ロシアが戦争で一応の主導権を握るドンバス地方でも今後、戦況はプーチン政権にとって、悪化が避けられない見通しだ。ロシア軍は2024年2月、東部の要衝ドネツク州アブデーフカを制圧して以降、各地で攻勢を掛け続けてはいるが、戦略的な戦果を上げられないままだ。

ロシアの有力な軍事専門家ユーリー・フョードロフ氏は「過去6カ月でロシア軍は一番進んだところで、20キロメートルから30キロメートル前進しただけ。戦争の行く末には関係ない結果だ」という。

同氏はそのうえで、ロシア軍がいくつもの難題を抱えていると指摘する。まず兵員の「決定的不足」と戦車などの装甲車両の深刻な消耗だ。

2024年の5月、6月の2カ月間でロシア軍の戦死傷者数は毎日1000人規模に増えたという。いくら戦死者を出してもひたすら突撃命令を出し続けるのが、ロシア軍伝統の戦法だ。

同軍事筋はこう苦笑する。「ウクライナ軍が発表するロシア軍の戦死傷者の数を米欧側は当初、信じなかったが、途中から信じ始めたよ」。そのうえで、「将校と兵士の質が急速に低下している」と指摘する。

ウクライナ軍が反転攻勢を仕掛けるためには、内なる大きな障害もある。反攻を巡り、バイデン政権との溝が一向に解消できないことだ。

先述のNATOサミットの際、ゼレンスキー大統領は米欧に対しウクライナに供与した兵器によるロシアへの越境攻撃の地理的制限を撤廃し全面解禁するよう求めた。ウクライナが求めているのは、F16などでロシア領内深くにある軍基地を攻撃できる許可だ。

しかし、ロシアとの軍事的エスカレーションを懸念するバイデン政権は一向に応じる姿勢を見せていない。

ゼレンスキーに不満を示すバイデン政権

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