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ネトフリで話題「地面師たち」に何だかモヤる背景 配信開始からSNSでの注目度は高いものの…

東洋経済オンライン / 2024年7月30日 14時0分

実際の事件をもとに入念なリサーチをしているだけあって、リアリティーがあり、手に汗握る緊迫感はある。

ただそれが、ハリウッド大作のそれなのだ。クオリティー高く作られた安定感と安心感はある。だがその完成度の高さが逆にクライム・サスペンスとしての退屈さと結びついてしまっている感があり、モヤモヤしてしまった。

圧倒的な見応えはあるものの、インディペンデント映画にあるような、何が起きるのかわからない不穏さや、不気味さを内包する気味の悪さ、居心地の悪さが欠けている。ハリウッド大作のドキドキワクワクではない、そういった恐ろしさ、怖さこそ、この物語に宿っていてほしい空気感だったと感じた。

日本の大手映画会社は、固定ファンのいる人気原作を人気俳優のキャストで実写映画化する、誰もが楽しめる予定調和のエンターテインメント大作をこの20年間、作り続けている。もちろん原作やストーリーは作品ごとに違うが、やっていることは一部を除いて本質的に変わらない。

20年前は興収50億〜100億円のヒットになっていたが、いまは10億〜20億円台。エンターテインメントに求める若者の感性や感覚が変わっても、ルーティンは続いている。

それ自体は、マスに向けたエンターテインメント大作に必要な要素であることも事実だ。『地面師たち』は、従来の日本の大作映画のような完成度の高いエンターテインメント作品に感じる。大作映画として見ればおもしろい。ただ、角がなく、丸い。作品性がとがっていないのだ。

それがNetflix作品であることに少なからず違和感を覚える。若い世代の視聴者が多く、世界中のドラマや映画を楽しむ目の肥えたエンターテインメントファンを会員にするなかで、日本の大手映画会社と同じような本作の作品性には、Netflixらしさが薄い、とも感じてしまったのだ。

その国らしい物語を重視するネトフリ

一方で、振り返れば、Netflixオリジナル『忍びの家』や『サンクチュアリ -聖域-』もエンターテインメント性の高いドラマであり、グローバルヒットしている。Netflixのオリジナル製作は、ローカルグローバルを掲げており、その国らしい物語をそのまま作ることが世界で受け入れられるとしている。

日本の実写映画では、是枝裕和監督や濱口竜介監督が描く人間ドラマが世界三大映画祭をはじめ世界的に高く評価されているが、Netflixの配信ドラマの世界には、異なるスタンダードがあるのかもしれない。『地面師たち』のこの先のグローバルランキングでの動向が注目される。

武井 保之:ライター

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