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「卒倒しそうになった」高校で学ぶ金融教育の実態 「アメリカへの投資」が日本を豊かにしないワケ

東洋経済オンライン / 2024年7月31日 10時0分

たとえば、アメリカの株価を牽引する会社の1つにGoogleがある。Googleという検索エンジンを開発したのは、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの2人だ。開発当時、彼らはまだスタンフォード大学の学生だった。

1990年代にインターネットが普及し始めたころ、インターネット上の検索エンジンの精度は低く、検索ワードと関連の少ないページが検索結果の上位に表示されることが多かった。その不便さを解消しようと彼ら2人が立ち上がった。集まった投資マネーによって多くの人を雇うことができ、Google Mapなどのさまざまな製品を開発することに成功した。

彼らのように、社会に存在する不便さや問題などの解決に取り組もうとする人がいるから、社会は暮らしやすくなっていく。その対価として消費者が支払うお金がGoogleに流れ、配当や株価の上昇を通じて投資家はお金を増やすことができる。

Googleの創設者たちは、事業を始めるときや拡大するときにお金が必要だったが、そのお金をバイトで稼いだり、株式投資をがんばって増やしたわけではない。投資してもらう側になったのだ。

会社を始めたい、お店を開きたい、アイディアを商品化したい。自分のやりたいことが社会の役に立つことであれば、投資や融資、クラウドファンディングなどの金融システムによって、お金を融通してもらえる。つまり、金融システムを利用することで、やりたいことの選択肢を増やせる。

ところが、現在の金融教育は主に投資教育に偏っていて、やりたいことを叶えるために「投資をがんばって賢くお金を増やしましょう」という話ばかりが聞こえてくる。

繰り返しになるが、金融教育とは、「より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に判断し行動できる態度を養う教育」である。

「日本の未来を明るくする」には、若い彼らに社会に存在する不便さや問題などの解決に取り組んでもらって、そこにお金が流れる必要がある。

そもそも、”金融”とはお金を融通するという意味だ。お金を融通さえすれば、社会が自動的に豊かになるはずはない。融通してもらった人が、そのお金を使ってどんな社会を作るかにかかっている。

それなのに、「君たちもお金を出す側にまわりなさい」と教え、さらには「アメリカの人にがんばってもらいましょう」とドル投資を薦める。

これが、「日本の未来を明るくする方法」なのだとしたら、完全なブラックユーモアだ。日本では新たなものは作られずに、消費者はアメリカにお金を払って利用させてもらうしかない。ますます円安も進むだろう。

現場が手探りの中、メディアの罪は深い

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