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Z世代を対象に「不安ビジネス」が蔓延する理由 財務に優れた日本企業は経営でも舵を切れるか

東洋経済オンライン / 2024年8月1日 10時0分

衝撃を受けた。思わず口が滑ったというより、台本を読み上げるような言い方だった。つまり誰かに指示されて、意図的に発信したのだろう。

このエピソードからわかることは2つ。まず、(一部の)企業は学生を脅して、不安を煽ってビジネスチャンスを得ることに躊躇がない。そして、学生は友達に弱い。よく調べている。名のある大企業だけあって、市場調査もきっちりやっているのだ。

こうした不安を煽る形で消費を促すビジネスを「不安ビジネス」と呼称しよう。Z世代は消費の主役とされているが、ふつうお金を持っていない。それでもお金を使ってもらうために不安を煽る。ぶっちゃけ、倫理的な面を見なければ、よくできたビジネスである。

鋭利な営利の論理

しかし、就活サービスをはじめとする不安ビジネスでは、なぜこんなにも営利の論理がむき出しなのだろうか。つまり、なぜ営利行為であることを隠さないのだろう。東京大学の清水剛教授は、次のような考察を展開する。

古典的な不安ビジネスに悪徳宗教がある。「あなたには霊が取り憑いてる」などと言って不安を煽るわけだ。そして、「浄化」や「救済」のためには、特別な儀式や祈祷、物品を購入する必要があるとして、献金を求める。この古典的な不安ビジネスでは、一応は宗教というていを装って、不安を煽る。恐らくは、「不安を煽るのは悪いことだ」という意識が、根本にはあるからだろう。

しかし、就活サービスのような不安ビジネスでは、営利の論理が隠されていない。年端もいかない大学生の不安を煽ることに躊躇がない。なぜこんなにも倫理性を欠いたビジネスが横行するのだろうか。

1つの結論として、清水氏が指摘するのは、不安ビジネスは「ローリスク・ローコスト」なビジネスだということだ。どういうことか。

たとえば、「社員を頑張らせる」というのは、会社の利益を増やす伝統的な方策の一つだ。現に一昔前であれば、とあるメーカーで社員たちが製品開発のためにほぼ年中無休で働くといったことが、美談として語られていた。だが今は、莫大な労働投入によってイノベーションを生み出す、という手がとれる時代ではない。また、「生産を増強させる」という方策もあるが、こちらも環境規制の厳格化などがあって、簡単ではない。

こうした状況を踏まえると、「客の不安を煽るだけ」で需要を生み出せるビジネスは、むしろ安パイとすら言えるかもしれない。もちろん消費者契約法など不安ビジネスを規制する制度はちゃんとあるのだが、すべてを規制できるわけではない。

問題は日本企業の財務状況ではない

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