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明るい時間帯に動く中国の諜報を摘発しにくい訳 中国共産党は外交官を偽装する工作員を使わない

東洋経済オンライン / 2024年8月2日 16時0分

一方で、現在ではサイバー空間上に多くの情報が存在するため、中国の「千粒の砂」戦略は本当に有効なのかという議論もあるようだ。

中国の諜報活動の手法について、元公安調査庁金沢事務所長の藤谷昌敏氏は、「中国情報機関によるアセット(協力者)獲得の特徴は、例えば、展示会等における商用を機会とした接触、趣味や飲食の場で偶然を装う接触などを端緒として、その後、ターゲットと1対1で面談し、相手の性格、嗜好、弱点や不満等を聞き出す。そして最初は製品のパンフレットの入手程度の軽い仕事を頼んで反応を見、次第に要求する情報のレベルを上げていく。

相手が給与や人事の不満を抱えていることが分かれば、金銭の授受や有利な条件での転職を勧めてくる」(日本戦略研究フォーラムウェブサイト「経済安全保障を積極的に推進する日本政府、公安調査庁との連携に


期待」)としている。

この手法はロシアのリクルート手法と大差はない。中国も、基本的には金銭的に依存させるほか、イデオロギーの部分で共鳴する者を取り込む。「脅迫」することもあろうが、それでは継続性が得られない可能性も残るほか、特に組織を裏切るというリスクが大きくなる。

中国の政治工作の例では、政治工作部門が、対象者である政治家の金銭的不安定を「弱み」とし、そこに付け込んで脅迫するのではなく、金銭的・政治的・精神的支援をすることで依存させ長期運営を果たしているケースもある。

日本国内に広大な人的ネットワーク

また、必ずしも工作活動によってイデオロギーを共鳴させるのではなく、既に同じ方向性のイデオロギーを持つ人物にアプローチし、イデオロギー上でいわば協力関係を結ぶほか、支援するといった手法もとられる。

一方で、ロシア機関員と大きく異なるのは、中国機関員は日本人と容貌が似ており、しかも、日本国内に多くの中国人コミュニティを持ち、広大な人的ネットワークを有していることだ。

それを活用し、「千粒の砂」戦略により多様なチャネルから情報を収集する。そのため、個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている。

稲村 悠:日本カウンターインテリジェンス協会 代表理事

上田 篤盛:元防衛省情報分析官

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