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追加利上げでも変わらない住宅ローンの超低金利 優遇幅の拡大でなお続く「新規顧客の獲得競争」

東洋経済オンライン / 2024年8月3日 9時0分

家計に響く住宅ローン金利の動向に注目が集まっている(記者撮影)

日本銀行が追加利上げを決めた。短期金利の代表的な指標である無担保コールレートは、従来の0.1%程度から0.25%に引き上がる。

【図表】もはや形骸化した住宅ローンの基準金利。各銀行は「基準金利」を据え置きつつ、優遇幅を拡大して「適用金利」を低くすることで競争を繰り広げてきた

本来であれば、住宅ローンの変動金利も同様に引き上がるはずだが、事態はそう単純ではない。各行が超低金利での過当競争を繰り広げる中、「客離れ」を懸念して金利の引き上げを見送る銀行が出かねないためだ。

利上げ局面でも「金利競争」

「金利優遇キャンペーン」。SBI新生銀行は、9月中旬までに契約した住宅ローンの変動金利を0.29%まで引き下げるキャンペーンを展開している。少なくとも昨年夏から実施されているが、3月のマイナス金利解除や今回の追加利上げを経てもなお、0.29%という超低金利を堅持している。

同行は、金利水準を「独自の判断」で決めているというが、変動金利の代表的な参照元の1つである6カ月物TIBOR(東京銀行間取引金利)は7月以来0.3%台で推移し、8月1日には0.42%をつけた。ともすれば逆ザヤに陥りかねない。融資実行時に徴収する手数料や、将来の金利引き上げで収益を取り戻したい思惑がにじむ。

銀行に金利の引き上げをためらわせるのは、他行の攻勢だけではない。「基準金利」と「適用金利」という2種類の金利を使い分けてきたツケが、今になって回ってきていることも見逃せない。

住宅ローンの変動金利は、短期プライムレート(短プラ)やTIBORなどの基準金利に連動する。だが、基準金利がそのまま借り入れ時に反映されるわけではない。個人の信用力などに応じて基準金利から一定の優遇幅(引き下げ幅)を引いた「適用金利」が、実際の借り入れ金利となる。優遇幅は完済時まで原則維持されるため、基準金利が上下しない限り、適用金利は変わらない。

低金利環境が長引く中、各行は基準金利を据え置きつつ、優遇幅を拡大して適用金利を低くすることで競争を繰り広げてきた。基準金利と適用金利の乖離が2%以上に及ぶ銀行も少なくない。

「基準」と「適用」どちらを上げる?

久方ぶりの利上げ局面で浮上しているのが、基準金利と適用金利のどちらを引き上げるかという問題だ。

各行には、基準金利のみ、適用金利のみ、両方引き上げる、という3つの選択肢が存在する。基準金利のみを引き上げたのは住信SBIネット銀行。5月に短プラを0.1%引き上げ、10月1日からさらに0.2%引き上げることを8月1日に公表した。10月1日は変動金利の借入利率が改定される判定日のため、既存顧客の適用金利は25年1月の返済時から計0.3%上昇する。

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