「ポスト岸田」に野心の茂木氏が及び腰になる事情 "令和の光秀"批判を恐れてか「先頭に立たず」
東洋経済オンライン / 2024年8月3日 9時0分
9月の自民総裁選に向け、党内実力者がこぞって注目しているのが、茂木敏充幹事長の動向だ。ここにきて「ポスト岸田」への野心を隠さないが、「私は明智光秀じゃない」と“裏切り者”批判を恐れてか、「(出馬表明では)先頭に立たない」との及び腰も目立ち、岸田文雄首相(総裁)が再選出馬宣言した場合の出馬見送りも示唆するなど、対応が定まらないからだ。
そもそも、総裁である岸田首相と幹事長の茂木氏の「関係」については、かねてから「まったく一体感がない」(自民長老)との指摘が多かった。岸田政権発足後約2年前後、岸田首相と麻生太郎副総裁、茂木幹事長による「三頭体制」で政権運営を進めてきたが、昨年秋の裏金事件発覚後、岸田首相による「派閥解散」「政倫審出席」などの重大決断の際には、麻生、茂木両氏への事前根回しがなく、「特に、総裁・幹事長関係に深い亀裂が生じた」(同)とみられている。
そうした中、ここにきて「三頭体制崩壊を見透かしたように、菅義偉前首相が“岸田降ろし”を仕掛けてきたことで、ポスト岸田政局の構図は一段と複雑化」(岸田派幹部)したことは間違いない。その背景には「麻生氏と菅氏のキングメーカー争い」(同)があるとされるだけに、「ポスト岸田」で麻生氏の支援が不可欠な茂木氏にとって、「菅氏を中軸とする反岸田勢力との対決姿勢を示さざるを得ない事態」(側近)となりつつある。
しかも菅氏は、茂木派幹部でもある加藤勝信元官房長官と極めて親しく、「状況次第では総裁選で加藤氏を担ぐ可能性もある」(菅氏周辺)とみられている。その場合は「茂木派が分断され、茂木氏の総裁候補としての資格が問われる」(茂木派若手)ことにもなりかねず、だからこそ茂木氏の対応が注目の的となっているのだ。
「自分はふさわしい人物か」と自問自答
その茂木氏は、梶山弘志幹事長代行らを引き連れて、7月28日から8月4日までの日程で、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピンの東南アジア各国を歴訪中だ。これについて、党内では「総裁選出馬に向けて外交力をアピールする狙いがある」(周辺)との見方が広がっている。
そうした中、茂木氏はタイ訪問中の1日夜、バンコクで同行記者団のインタビューに応じた際、総裁選への対応について「今の仕事がどうであるとか、例えば明智光秀になるんじゃないかとか、色々な意見があるかもしれないが、この難局を乗り切るにはどうしたら良いか、自分はふさわしい人物なのかが、大きな判断基準だ」と語ったという。
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