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中国の粗鋼生産量が「上半期は微減」の背景事情 国内需要の低迷で、鉄鋼メーカーは軒並み赤字

東洋経済オンライン / 2024年8月5日 19時0分

中国の鉄鋼業界は構造的な生産能力過剰に直面している。写真は最大手の宝武鋼鉄集団の転炉設備(同社ウェブサイトより)

中国の粗鋼生産量がわずかながら減少に転じたことがわかった。中国国家統計局が7月15日に発表したデータによれば、2024年上半期(1~6月)の中国全土の粗鋼生産量は5億3000万トンと、前年同期比1.1%の減少を記録した。

【写真】中国の港で輸出される鋼材を検査する税関の係官

「上半期の生産量の減少は、鉄鋼メーカーの消極的な減産によるものだ。国内の鋼材需要が低迷し、十分な受注量が得られない中、鉄鋼メーカーの多くが赤字に陥っている」

情報サービス会社、我的鋼鉄網のチーフアナリストを務める徐向春氏は、財新記者の取材に対してそう解説した。

鞍山鋼鉄集団は赤字倍増

上場鉄鋼メーカー各社が開示した業績予想を見ると、2024年1~6月期の損益見通しは軒並み赤字になっている。

例えば遼寧省の鞍鋼集団の上場子会社である鞍鋼股份は、1~6月期の赤字額が前年同期の約2倍の約26億7900万元(約583億円)に拡大すると予告した。河南省の安陽鋼鉄集団も、上半期の赤字額が前年同期の約1.5倍の12億6000万元(約274億円)に膨れ上がると予想する。

安徽省の馬鞍山鋼鉄股份は、前年同期に比べて約10億8700万元(約237億円)の損益改善を見込む。とはいえ、1~6月期の予想損益は11億4800万元(約250億円)の赤字であり、黒字転換には至らない。

各社は赤字見通しの理由について、「供給量に対して需要が弱く、鉄鋼業界全体が利益を生み出せない構造に陥っている」と釈明する。(エンドユーザー向けの)鋼材相場の低迷が続く中、(鉄鉱石や石炭などの)原材料相場も下がってはいるものの、鉄鋼製品の価格の下げ幅が原材料よりも大きく、鉄鋼メーカーの利幅が削られているという。

中国国内の鋼材需要の低迷は、不動産不況の長期化で開発プロジェクトの新規着工が減少しているのが主因だ。さらに、(地方政府による)公共インフラ投資の執行額も例年の水準を大きく下回っており、需要不足に拍車をかけている。

そんな中、国内需要の不足を部分的に埋め合わせているのが輸出の拡大だ。とはいえ中国の鋼材輸出は、量を確保するために価格を犠牲にするジレンマに直面している。

中国海関総署(税関)のデータによれば、2024年上半期の鋼材輸出量は5340万トンと前年同期比24%増加した。だが、平均輸出価格は1トン当たり778.8ドル(約12万2960円)と同26.9%の大幅下落を記録した。

求められる主体的減産

「消極的減産を余儀なくされた鉄鋼メーカーの一部は、鋼材相場の下落が一段落したら再び増産したいと考えている。だが、それは市場価格の再下落を引き起こし、悪循環を招きかねない」。前出のアナリストの徐氏は、そう警鐘を鳴らす。

徐氏の見方によれば、2024年後半の鋼材相場の流れを決めるカギは(回復が期待できない需要サイドではなく)供給サイドにある。鉄鋼業界が自ら進んで減産に取り組まなければ、需給バランスの長期的均衡は望めないという意味だ。

財新記者の取材によれば、中国の中央政府は(国の基幹産業である)鉄鋼業界を健全な発展に導くため、粗鋼生産の新たな調整政策を打ち出す予定だった。しかし7月中旬の時点で、新政策はまだ発表されていない。

(財新記者:羅国平)
※原文の配信は7月15日

財新 Biz&Tech

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