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中国半導体戦略、米国が見過ごした「脅威の火種」 業界のキーマンが語る「米中半導体摩擦」前夜

東洋経済オンライン / 2024年8月6日 13時0分

このころ、同じように、中国の動きをいち早く危険視したのが米国議会である。

中国の通信機器メーカーに安全保障上の脅威があると調査を開始し、2012年には政府に中興通訊(ZTE)製品に規制をかけるよう進言した。

しかし、このときの米政府の反応は鈍かった。

米国には「PCAST(President’s Council of Advisors on Science and Technology)」という諮問機関がある。イメージ的には大統領科学技術諮問会議といったところだろうか。

PCASTのメンバーは15人程度で、学者のほか、経済界からも加わるのがつねだ。年に数回会議を開き、政策のもととなる報告書を発表する。

いろいろな評価があるドナルド・トランプ前大統領だが、コロナワクチンの開発・供給計画「オペレーション・ワープ・スピード」は、間違いなく大きな功績だったといえる。まさにすさまじいスピードでワクチンをつくり上げたのだが、その背後にはPCASTの提言があったといわれている。

そんなPCASTで、「半導体の長期的な競争力を保つための方策」がテーマになったことがある。バラク・オバマ元大統領の2期目の終盤に当たる2016年のことだ。

このときは、世界第3位のファウンドリーであるグローバルファウンドリーズの社長だったアジット・マノチャ(SEMIの現会長兼CEO)や、インテルの第4代社長クレイグ・バレットなど、そうそうたるメンバーが招集された。

しかし、PCASTが出した提言は、米国が中国をグローバル経済において欠くことができない貿易相手国と見ていたことがわかるものだった。

「中国には懸念材料が山ほどあるが、世界はグローバルであり、半導体は非常に複雑なサプライチェーンになっている。それには手をつけられないだろう。だから、米国は他国に追いつかれないように速く走ればいい」

世界中の情報が集まる米国の、しかも大統領の諮問機関でさえ、グローバリズムは未来永劫続くと考えていたのだ。

ファーウェイのバックドア疑惑

米国の対中制裁がようやく本格化したのは、2018年4月になってからだ。

きっかけは、中国通信機器大手のZTEが、米国の拠点からイランや北朝鮮に違法に通信機器を輸出し続けたことだった。米国政府はZTEに対し、米国企業との取引の7年間禁止を言い渡す。

2019年に米国政府は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)も輸出管理法に基づくエンティティー・リスト―― つまり禁輸リストに加え、米国由来の技術やソフトウエアを使用した製品の輸出を許可制にした。ファーウェイの製品に、不正アクセスの侵入口である「バックドア」が仕掛けられ、機密情報などが漏洩するリスクがあるという理由からだった。

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