日産「99%減益」の真因、アメリカ事業に2つの課題 インセンティブ濫発とHV不在のダブルパンチ
東洋経済オンライン / 2024年8月7日 8時0分
日産に16年間勤務し北米事業の経験もあるブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは、「40年以上変わらない構造問題だ。日産には『こんなに売れるわけがない』とみんながわかっていても過大な計画を立ててボリュームを伸ばそうとする歴史がある。『できない』と言った瞬間、『君はいらない』と言われてしまう」と嘆く。
日産関係者によれば、「そもそも今回、ローグのモデルチェンジが遅れたのもストレッチした生産計画とブランド力低下によって旧モデルが売れ残ったのが原因。特殊要因があったわけではない」。
日産の在庫は、コロナ禍や半導体不足で供給制約が起きた2019年以降、減少していた。供給制約が解消された途端に無理して数を追う悪弊が顔を出した。コロナ禍が隠していた日産の構造問題が再び噴き出した形とも言える。
人気のHVを投入できない日産
足元での日産のアメリカ市場での苦戦にはもう1つ深刻な課題がある。ハイブリッド車(HV)の不在だ。
世界2位の自動車市場であるアメリカ市場では現在、電気自動車(EV)の販売が失速しHVの販売が伸びている。インフレや金利上昇で割高なEVが敬遠され、トヨタ車を筆頭に価格が手ごろで燃費もいいHV人気が高まっているためだ。
実際、HVのラインナップをそろえるトヨタ自動車やホンダはインセンティブを抑制しつつアメリカ市場での販売を伸ばしている。一方、4~6月の日産の販売台数は23万台。インセンティブを積んでなお前年同期比3.1%減と低迷する。
日産も「e-POWER」と名づけた独自HVシステムを持っている。走行にエンジンと小型モーターを併用する一般的なハイブリッドシステムと異なり、e-POWERはエンジンを発電のみに使い、起こした電力でモーターを駆動させて走るシリーズ方式のハイブリッド技術だ。
これまで日産はe-POWERをアメリカ市場で展開してこなかった。その理由を「EV投入を優先してきたため」と説明しており、2026年度に投入する予定としている。
だが、「e-POWERは高速域での燃費に課題が大きい。そのまま投入しても商品としての魅力が弱く、日本以外では売れない」(日産の元技術系幹部)という声がある。
道路環境の違いから、北米では高い速度域をキープして走る運転が多い。こうした高速一定走行はエンジンをそのまま駆動に使った方が高効率で、エンジンで発電しその電気でモーターを動かすe-POWERはむしろ燃費が低下するのだ。
この記事に関連するニュース
-
日産、九州工場3割減産 北米主力車「ローグ」輸出拠点=関係者
ロイター / 2024年7月26日 22時11分
-
ホンダ、中国で失速生産能力3割減、日産は北米不振で営業益99%減[新聞ウォッチ]
レスポンス / 2024年7月26日 8時25分
-
米新車販売、第2四半期は前年同期比横ばい、サイバー攻撃の影響も(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年7月11日 0時25分
-
日産の中国工場が「中国ブランドEV」を受託生産 東風汽車系「嵐図」から。余剰生産能力を活用
東洋経済オンライン / 2024年7月10日 18時30分
-
日産の「ハイブリッド」何が「スゴイ」? トヨタ式ハイブリッドとの「違い」って!? 窮地を救った独自の「技術」とは
くるまのニュース / 2024年7月8日 16時40分
ランキング
-
1盛り上がる転職市場で“なぜか敬遠されてしまう人”の共通点…歓迎される人材になるために不可欠な「3つのオーラ」とは?【エグゼクティブ転職のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月7日 7時15分
-
2枝豆を大量に保存しておきたい…ちょっとした「ひと手間」で、より美味しく 野菜ソムリエプロに聞いた
まいどなニュース / 2024年8月6日 10時40分
-
3【熱帯夜】睡眠時の熱中症対策、エアコン冷房を上手に使うコツは? - ダイキンが解説
マイナビニュース / 2024年8月6日 11時37分
-
4「うつ防止」脳科学的にお勧めの「テレビの見方」 見ているだけだと「脳の老化促進マシーン」に
東洋経済オンライン / 2024年8月6日 15時0分
-
5なかなか仕事を覚えられない人は8割 「覚えることが多い」「興味が薄い」…何か対策はしている?
まいどなニュース / 2024年8月6日 11時40分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください