フワちゃんや旧ジャニも「不適切投稿」多発の必然 一般人もひとごとではない「SNS利用」の落とし穴
東洋経済オンライン / 2024年8月7日 14時30分
YouTuberでタレントのフワちゃんがSNSで“暴言”を投稿したことが問題化し、彼女がパーソナリティを務めるラジオ番組「オールナイトニッポン0」の放送が休止になるまで発展している。
【写真】旧ジャニーズタレント・WEST.の中間淳太がしてしまった「不適切投稿」の中身
発端は8月2日、お笑い芸人のやす子さんがX(旧Twitter)に「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす」と投稿したことに対して、フワちゃんが「おまえは偉くないので、死んでくださーい 予選敗退でーす」と引用ポストしたことによる。
同日にフワちゃんは当該の投稿を削除し、「本当にすみません (中略) 言っちゃいけないこと言って、傷つけてしまいました ご本人に直接謝ります」と謝罪した。また、6日には直接本人と会い、謝罪したとの報道もある。
しかし、騒動は一向に収まらず、ラジオ番組が放送休止になっただけでなく、フワちゃんが出演していた「Google Pixel」のCM動画が公開停止になっている。今後、さらに影響が広まる可能性もある。
フワちゃんはどうしてこのような投稿を行ったのだろう?
そう首をかしげている人は多い。裏アカウントから投稿しようとしたものを誤って本アカウントに投稿したのではないか、とする記事も出ていたが、フワちゃんの所属事務所は裏アカウントの存在を否定した。
フワちゃん以外にも続出する“炎上”
芸能人の不適切投稿は他にも起こっている。本件ほど大きな問題にはなっていないが、旧ジャニーズ事務所のタレントが、新たにSNSを開設して炎上トラブルを起こすという事態も起きている。
たとえば今年の5月、生田斗真さんがInstagramのストーリーズの機能を使ってファンとのやり取りを行った際に、「今日で妊娠9ヶ月です 出産こわいよー」と投稿した人に、「旦那様に無痛 おねだりするか」と返答して批判を浴びた。
6月には、WEST.の中間淳太さんが、女性と思われるライブスタッフとの親密な様子をSNSに投稿してファンから批判を浴び、投稿を削除して謝罪を行った。さらに同月、車窓から見えた郵便受けの写真を投稿し、個人宅の特定につながりかねないという批判を浴び、同様に削除と謝罪を行っている。
タレントの不適切投稿が目立つようになった背景には、事務所の管理が緩くなっていることもあるように見える。
これまでは、芸能事務所が発信する情報を管理して、イメージ形成を行うのが一般的であったが、「タレントの自由を制限し過ぎるのはよくない」という風潮が強くなってきているし、タレントの活動領域も広がり、タレント側も「自分で情報発信したい」という意識が強まっている。
しかしながら、SNSの運用に十分に慣れていないタレントが、いきなり多くのファンやフォロワーを相手に情報発信することには、当然リスクも伴ってくる。事務所が逐一投稿を管理するところまでやる必要はないが、ガイドラインを策定して、タレントへの啓発を図っていくことは重要であるだろう。
一方で、不適切投稿は、芸能人に限らず、一般人でもよく起きていることだ。現在開催中のパリ五輪に関して、選手や審判、運営側などへの誹謗中傷が相次いでいる。
これに対して、IOC(国際オリンピック委員会)が誹謗中傷を受けた選手のケアを行うスペースを新設したり、JOC(日本オリンピック委員会)が誹謗中傷行為に対する警告を出したりするという、異例の対応が行われるに至っている。
有名人のSNSでの失態を問題視する声は大きいが、これをひとごととして見るのでなく、「自分もやるかもしれない」ということを肝に銘じておくべきだ。
なぜ不適切投稿をしてしまうのか?
SNSは“Social Networking Service”の略だが、英語では“Social Media”と呼ぶのが一般的だ。つまり、「社交のメディア」「社会的なメディア」という意味である。
昨今のSNSへの不適切な投稿の多くは、この点に関する利用者の認識の欠如から来ているように思える。
たとえば、フワちゃんがやす子さんと直接会っており、冗談として同様の発言を行ったのであれば、さほど問題にはならなかっただろう。
LINE等のメッセンジャーで直接やり取りを行っていた場合、相手を傷つける結果にはなったかもしれないが、あくまでも“当事者間の問題”として解決できたはずである。
SNSへの投稿が問題となるのは、下記の状況があるからだ。
1.(たとえ個人的なやり取りであっても)世の中に広く発信されている
2.投稿時の空気感や状況を、読者側は共有していない
不適切投稿は、酒に酔ったときにされることが多い。顔見知り同士の飲み会の席で失言があっても、大半は「こいつは酔うとこうだから」で済まされる。
しかし、SNSの投稿ではそうはいかない。過去に筆者の仕事仲間で、プライベートで嫌なことがあり、やけ酒を飲み、酔った勢いで、仕事関連SNSグループで暴言を投稿して、仕事から外され、SNSアカウントの削除に追い込まれた人がいる。
本人に非があったとはいえ、まさに“泣きっ面に蜂”の状況に陥ってしまったのだ。
酔ったときに限らず、テンションが上がっていたり、怒っていたりしたときの投稿は、感情が直接出てきてしまう。しかし、投稿者と場を共有しておらず、面識もない第三者からすると、投稿に共感しづらいし、ときに反発を覚えることさえある。
フワちゃんが“暴言”を投稿したときの状況や本人の心理状態は明らかにされていないのでわからないが、突然メッセージを受け取ったやす子さんや、第三者のSNSユーザーからすると、“暴言”としか受け取れないだろう。
特に有名人やインフルエンサーになると、影響力も大きい。生田斗真さんや中間淳太さんの炎上も、プライベートの延長、あるいは限定されたファンとのやり取りのつもりで投稿したものが、予想を超えて拡散し、炎上してしまったものとみられる。
誰にでも起きうる不適切投稿による“炎上”
不適切な投稿を行ってしまった際には、炎上が広がる前に、当該の投稿を削除して、謝罪をするのが一般的だ。今回のフワちゃんのケースでもこのプロセスは取られている。
しかしながら、「どうしてこういう投稿をしたのか?」という経緯の説明がないために、憶測や疑心暗鬼を生んでおり、なかなか鎮火しない状況になってしまっている。
知名度が高く、フォロワー数も多い有名人は、炎上も燃え広がりがちで、それによるダメージも大きくなるが、一般人も同様のリスクを抱えている。
筆者の感覚としても、このような問題が多々起きる昨今でも、以前より不適切な投稿を行う人が目立つようになってきたと感じる。
かつてはそうした投稿を行う人は、X(旧Twitter)の匿名アカウントが中心だった。最近では、素性を明かすことの多いInstagramやFacebookでも不適切投稿が目立つようになっているし、実際にそこからの炎上も起こっている。
SNSでの不適切投稿は以前からあったが、最近は、個人が私的な感情や意見をSNSで吐き出してしまうケースが目立つようになっている。
具体的には、下記のような投稿がよく見られる。
・暴言や誹謗中傷行為
・政治や宗教などに関する意見表明
・論争・議論の過熱化
・情報漏洩やプライベートな情報の公開
SNSの使い方が多様化して、一人の人間が本アカウント以外にも、「サブアカウント」「裏アカウント(裏垢)」「非公開アカウント(鍵垢)」など、読者層に応じて複数のアカウントを使い分けたり、コミュニティ機能を活用したりするようになった。
いつの間にか、SNSは“ソーシャル”なメディアであるということが、忘れられてしまっているように思える。
行き過ぎた投稿をしていないか?
特に、ここ数カ月は、都知事選や五輪、株価の急落など、人びとがヒートアップしやすい出来事が続いており、何か起きるたびにSNSも荒れがちになっている。
特定の候補者やアスリートに関して批判的な意見を言うと、当人だけでなく、支持者やファンの人たちは不快に思うだろう。特に、落選したり、試合に負けたりしたときはなおさらだ。
株価が急落したら損失を抱える人も増えるが、そうした中で、投資や投資家について批判的な意見を述べると、多くの投資家が気分を害するのは当然のことだ。
フワちゃんの暴言はたしかに行き過ぎではあるが、自分自身も行き過ぎた投稿をしていないか、一度振り返ってみるべきタイミングが来ているように思う。
批判的な意見がすべていけないというわけではない。だが、投稿する前にそれを読んだ第三者が不快に思わないか、一度考えてみれば、大半の“不適切投稿”は回避できるはずだ。
西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授
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