【お盆休みに直面】将来「墓じまい」する人へ警告 実際やってみて「甘くはなかった」嘆く人が続出
東洋経済オンライン / 2024年8月10日 12時0分
結婚しても子どもをもたない夫婦、いわゆる「おふたりさま」が増えている。
共働きが多く経済的に豊か、仲よし夫婦が多いなどのメリットはあるものの、一方で「老後に頼れる子どもがいない」という不安や心配がある。
そんな「おふたりさまの老後」の盲点を明らかにし、不安や心配ごとをクリアしようと上梓されたのが『「おふたりさまの老後」は準備が10割』だ。
著者は「相続と供養に精通する終活の専門家」として多くの人の終活サポートを経験してきた松尾拓也氏。北海道で墓石店を営むかたわら、行政書士、ファイナンシャル・プランナー、家族信託専門士、相続診断士など、さまざまな資格をもつ。
その松尾氏が、最近増えている「墓じまい」についての注意点を解説する。
「驚くほど面倒な手続き」が待っている
最近「墓じまい」という言葉を耳にすることも多くなりました。お盆の帰省で「実家のお墓、将来どうしよう……」
【ひと目でわかる】「墓じまい」の準備が必要な「2つのタイプの人」と「具体的にやること」
「墓じまい」とは、現在あるお墓を解体・撤去し、墓地を更地にすることをいいます。少子高齢化が進み、
・お墓を承継してくれる子どもや孫、親族などがいない人
・遠方にある実家のお墓を整理したいと考える人
が増え、「そろそろ墓じまいを……」と考える人が増えています。
そこで「墓じまいなんて、2~3日もあればできるだろう」と考えていると、手続きの煩雑さに驚くことになるかもしれません。
実際に、遠方の実家の墓じまいをするのに「こんなに大変だとは思わなかった」という人が続出しています。
「墓じまいをするために、何度も東京と実家のある北海道を行き来した」
「墓じまいを終えるまで、最終的に数年かかった」
といった声もよく聞きます。
墓じまいでは、「いまあるお墓を解体撤去すること」と「そこに納骨されていたお骨を別の施設に移すこと(改葬)」の2つを同時に行います。
さまざまな届け出や書類の提出、業者とのやりとりなどが必要になってくるため、そう簡単なものではないのです。
今回は、墓じまいの基本的なルールと方法について解説します。
一般的な墓じまいの手順を紹介しましょう。
墓じまいに必要な「準備」と「手順」は?
①名義の確認・変更
古いお墓だと、墓地使用者の名義が故人のままになっているケースが多いです。故人の名義のままでは各種の申請ができないので、名義を現在生きている人に変更する必要があります(墓地の承継手続き)。
届け出のみで済む場合もあれば、これまでの使用者とこれからの使用者の関係性を証明するために、戸籍謄本などの提出を求められることもあります。
②墓地の返還とお墓の解体工事に関する手続き
墓地の管理者によって必要な手続きは異なりますが、多くの場合、次の届け出が必要です。
・墓地の返還に関する届け出(墓地返還届など)
・お墓の解体に関する届け出(墓地工事施工届など)
・お骨の移動に関する届け出(改葬許可申請)
ここで注意が必要なのは、これまでお墓に入っていたお骨をどこに移すかが決まっていないと、改葬許可申請を行えない点です。
わかりやすくいえば、お骨の引っ越し先(新しいお墓、納骨堂、合葬墓など)を事前に決める必要があるのです。
③石材業者への依頼
石材業者にお墓の解体工事を依頼します。長く離れていた実家などの場合、土地勘のないところで石材業者を探さなければならず、一苦労するケースもあります。
①〜③に加え、墓から遺骨を取り出す前に「閉眼供養」(魂抜きともいいます)を行う場合は、僧侶の手配も必要です。
事前の知識ゼロで墓じまいをはじめて「こんなにやることがたくさんあるのか!」と驚く人も多いようです。
墓じまいの手続きに関しては、石材業者が相談に乗ってくれる場合もあります。
また、改葬手続きを得意とする行政書士などに委任する方法もあります。
このように、一口に墓じまいといっても、各種届け出や書類の提出、改葬先の準備、お墓の解体、閉眼供養と、さまざまなプロセスが必要です。
お墓の解体に立ち会う場合は、改葬先への移動も行うことになるため、日程に余裕をもたせた検討が必要です。
「思った以上」に大変なので「準備」が重要
墓じまいの大切なポイントのひとつに、親族への相談があります。
先祖代々受け継がれてきたお墓の場合、多くの親族にとっても、自分たちのご先祖さまが納骨されているお墓なのです。
「お墓参りをしようとしたら、知らないうちにご先祖さまのお墓がなくなっていた!」「勝手に遺骨を移すなんて許せない!」というようなことにならないように、事前に墓じまいの意向を伝え、相談しておくことが、トラブル防止につながります。
親戚に相談し、了承を得るために長い時間を要するケースもあるようです。
墓じまいには、事前の準備やさまざまな関係者との調整が欠かせません。
思った以上にやらなければいけないことが多いので、じっくりと腰を据えて「準備」に取りかかることをおすすめします。
松尾 拓也:行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家
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