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燃料供給不足、背景に海外航空のドタキャン問題 空港会社や国も動いているが、解消できるのか

東洋経済オンライン / 2024年8月10日 9時0分

船の数に余裕がないという根本的な問題はあるが、「系列化で硬直した輸送体制」が問題の本質ではないようだ。

最大の問題は「ドタキャン」

国内のエアラインは通常、半年から1年前には石油元売り各社あるいは給油会社と調整を始める。「JALやANAから燃料が欲しいと言われれば、なんとしてでも調達する」(元売り関係者)。ただ、元売りは基本的に年間で需要予測を立て、燃料供給体制を組んでいる。

一方、海外のエアラインは運航希望日の2〜3カ月前に就航をリクエストするケースもざらだ。が、ある石油元売り幹部は「2カ月前までならなんとかできるケースもあるが、それを過ぎると追加のタンクローリーや船を手配するのは難しくなる」と実情を語る。

海外LCCよっては、就航リクエストが運航予定日の2か月前で、燃料調達などの調整を50日前までに行ったものの、40日前になって就航を突然キャンセルする事例も見受けられる。これが繰り返されると元売りも半信半疑になり、船やタンクローリーの手配に慎重にならざるを得ない。

タスクフォース関係者は「あるアジア系のLCCは複数空港にオファーを出しておいて、需要を見ながら就航先を決めている。行かなかったところは容赦なくキャンセルする。燃料供給不足の火元は、案外同じところなのかもしれない」と話す。

運航キャンセルのリスクは制度上、避けられない。航空会社と空港の契約、給油会社との契約は相対で行われており、違約金の取り決めもそれぞれだ。「地方の空港は海外エアラインの誘致に必死で、あまり強気な交渉ができない」(国交省担当者)という実情もある。

石油連盟は海外エアラインに対して、時間的な余裕を持ち、確度の高い就航スケジュールの提示を求めているが、在日航空会社代表者協議会(BOAR)は「各航空会社は世界経済の動向を鑑みてネットワーク構成を決めているため、1年前に燃料需要予測を提出することは困難」と釘を刺している。

年間で供給体制を組みたい元売りと、ドタキャンも辞さない海外エアラインとの間には、大きな溝がある。

空港や国が間に入り、解決につながるのか

この点、燃料供給不足解消に向けた「行動計画」でも、各空港の需要量を把握する仕組みの構築が示されている。空港会社がエアラインからヒアリングし、確度の高い情報を収集・整理して元売りに伝えるというものだ。

通常は航空会社が元売りと直接交渉するケースが多いが、空港会社が情報を取りまとめて元売りに提供し、供給体制の精度を高める。調整の中で問題が発生した際の相談窓口も国が設ける。

国交省の廣田健久・航空ネットワーク企画課長は「各空港でどれくらい需要が増えるのか、企業の競争に影響を与えない形で国も情報を集約し、空港・エアラインと元売りをつないでいきたい」と話す。

果たして情報集約の仕組みは機能するのか。空港会社や国が間に入っても、海外エアラインの態度が変わらなければ、燃料供給不足問題の根本的な解消の決め手にはならないだろう。

森 創一郎:東洋経済 記者

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