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「刀剣乱舞」企業をサイバーが167億円買収の衝撃 悲願成就へ「過去最大規模M&A」に打って出た

東洋経済オンライン / 2024年8月12日 8時0分

そんな中、海外市場の成長が著しいアニメなどの領域においてIPビジネスで成功することができれば、おのずと「世界のサイバー」への道が拓けてくる。そうした狙いから、自社のノウハウでは心もとないIPビジネスを、M&Aもフル活用しながら強化してきたのだ。

功を奏した藤田社長の"作戦”

もっとも、IPビジネスに関心を示すのはサイバーエージェントだけではない。4月に実施した東洋経済のインタビューで藤田社長は、「世界的にヒットするようなIPを保有している状態になりたい。売っているなら、本当は買ってもいいぐらい。ただ、みんな(価値に)気付いてしまったので売っていない」と漏らしていた。

そこで藤田社長が採ってきたのが、「日頃の行いをよくする作戦」だ。

スマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』を生み出した有力子会社のサイゲームスをはじめ、エンタメ子会社に過度な干渉をせず、自由な環境を与えてきた。こうした姿勢が業界内で評判となり、BABEL LABELとネルケプランニングの買収では、ともに先方から提携話が持ち込まれることとなった。

今回のニトロプラス買収も、まさに藤田社長の「日頃の行い」が実を結んだ案件だった。

実はニトロプラスの小坂崇氣(こさか・たかき)代表は、ネルケプランニングの社外取締役を兼ねている。サイバーエージェントによるM&Aが決まった当初、小坂氏はネルケプランニングのよさが失われることを危惧していたという。

しかし、サイバーエージェントが6月下旬に公開したオウンドメディア記事で小坂氏は「まったくの杞憂でした。サイバーエージェントの方々はネルケの方針や文化を尊重している印象を持ちました」と明かしている。これが契機となり、ニトロプラスの社内制度設計に課題感を抱いていた小坂氏自身から、藤田社長に接触。藤田社長の作戦勝ちとなった。

今後の注目は、サイバーエージェントが立ち上げを進める「IP創出特命部隊」との連携による新規IP創出だ。

同部隊は、次期社長候補の筆頭と目される山内隆裕専務の下、クリエーターとのコミュニケーション、テクノロジーによる制作・マーケティング支援などを担うことを想定しており、ニトロプラス側がクリエーティブに専念できる環境づくりが期待される。

海外強化で期待に応えられるか

一方で気がかりな点もある。

ニトロプラスの小坂氏は前出のオウンドメディア記事において、「ニトロプラスの唯一無二の個性を持った作品をサイバーエージェントとともに質を高めて世界に送り出していきたい」と展望を語っていた。しかしサイバーエージェントはむしろ、海外進出で後れを取っている状況だ。ニトロプラスの期待に応えるためには、海外マーケティングなどの機能強化を急がなければならない。

サイバーエージェントはビッグディールを経て、ニトロプラスの価値最大化に貢献することができるか。“世界のサイバー”に向けた試金石となりそうだ。

森田 宗一郎:東洋経済 記者

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