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「スキマバイトをやめられない」52歳男性の窮状 企業都合のドタキャン、休業手当の未払い…

東洋経済オンライン / 2024年8月15日 10時0分

ただシンゴさんは「自分は帰宅途中の事故で(対象となるか)微妙だったので、問い合わせはしませんでした」。結局医療費はすべて自費で賄った。

約4万円の家賃を含めると毎月11万円は必要だというシンゴさん。タイミーの利用停止中はたとえ猛暑日続きでも配達に精を出すしかないというわけだ。

一方でシンゴさんは、タイミーの仕組みには不満もあるという。というのは、企業側からの一方的なドタキャンも少なくないからだ。この1年で10回ほど、前日になって「企業都合のキャンセルです」という内容のメールを受け取り、予定していた仕事がなくなった。

シンゴさんは自分の推測なのですがと断りつつ、次のように語る。「募集要項によく『学生さん、女性歓迎』って書いてあるんです。会社は自分らのような中年をとりあえずキープ。若者や女性が集まったら、切り捨てているんじゃないでしょうか」。

突然キャンセルされて困るのは企業側だけではない。シンゴさんは「こっちも予定を空けていますし、収入も当てにしています。企業都合ならせめて賃金の半分は補償してほしい。自分らだけがぺナルティを課されるのは不公平です」と訴える。

また、約束の勤務時間に応じた賃金が払われないこともあったという。

荷物搬入の仕事で、勤務は午前9時〜午後7時だった。しかし、実際には作業は午後4時に終了。いわゆる「早上がり」である。支払われた賃金は実働分のみで、金額は当初見込みの6割にとどまったという。このような場合、法律は原則平均賃金の60%以上を休業手当として支払うよう定めている。手当の未払いは法令違反の可能性があるが、私がさらに驚いたのは、このときの雇用関係の複雑さだ。

シンゴさんによると、この日はある運送会社の指示のもとで働いたが、雇用主は別の派遣会社。運送会社が派遣会社に労働者の派遣を依頼、派遣会社がタイミー経由でシンゴさんを雇ったのだ。シンゴさんが運送会社の社員に給料について尋ねたところ「派遣会社には人件費は満額払ってるから、もらえるんじゃない?」と返されたという。

派遣会社が賃金の一部をピンハネしたのだろうか。そうでなくとも雇用関係が複雑になると、責任の所在はあいまいになりがちだ。タイミーに確認したのかと尋ねると、シンゴさんはこう言って首を横に振った。「タイミーの怒りを買いたくないので聞いてません」。

私は最近、スキマバイトの問題を取材する機会が増えている。企業側のドタキャンや休業手当の未払いという事例はほかの利用者からも聞いた。ある人は「タイミーに訴えたら休業手当は払われました。でも、その後、その会社からの募集はピタリとなくなりました」と話していたので、シンゴさんの懸念は杞憂とはいえない。

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