「メガネの子が増えた」のはスマホが原因ではない 「外遊び」と「子どもの視力」の驚くべき関係
東洋経済オンライン / 2024年8月16日 7時0分
高濱:近視にそこまでのリスクがあるとは私自身知りませんでした。
窪田:これは、一つの社会問題だと思います。いかに社会全体で「近視」を防いで将来にわたって目の健康を守るかが重要になってきます。
「近視は遺伝だから仕方ない」と諦めないで
高濱:子どもにメガネをかけさせることに対する親の抵抗感も弱まりましたよね。ひと昔前は、メガネをかけていると「メガネ」とあだ名がつけられたりするので、親も子もできるだけ近視にならないように心がけていた気がします。
窪田:今は、「親が近視だから子どもが近視になるのも仕方がない」「視力が落ちたらメガネをかけさせればいい」と考える親御さんが多いですね。でも、眼科医としてその考え方には警鐘を鳴らしたいと思います。
先ほどもお話ししたように、近視になると将来の失明リスクが何倍にも跳ね上がることもそうですが、今、世界では「子どもの近視進行は抑制できる」ということが常識になりつつあるからです。
特に海外では、進行抑制に成功した事例がいくつも発表されていますし、臨床研究も進んでいます。ぜひそのことを日本の親御さんにも知っていただきたいのです。
高濱:近視は抑制できるということを知っている親自体が少なそうですね。
窪田:日本ではまだまだ少ないです。アメリカや中国、台湾などの「意識の高い親」の間では、もはや「常識」といってもいい話なのですが。
これは台湾で10年以上前から国を挙げて取り組んできた施策にまつわるデータです。
窪田:台湾では2010年に、小学生を対象に学校で1日2時間程度、屋外活動をすることを義務づけました。その結果、子どもの近視割合が2012年から減少に転じました。WHO(世界保健機関)も2019年に視力に関する最初の報告書を発表し、その中で「最も頻度の高い眼疾患である近視と外遊びの重要性」を指摘しています。
高濱:私も経営している学習塾では子どもの野外活動を一貫して重要視してきましたが、外遊びが子どもの目にもよいとは……。子どもの心身の成長に外遊びはやはり必要不可欠なのですね。
「目は脳の一部」という認識を持ってほしい
窪田:今、高濱先生は「心身」とおっしゃいましたが、実は「目は脳の一部」なんです。目という組織は、脳の一部が飛び出してむき出しになっている中枢神経の一部で、身体の中で最も血流量が多い臓器は目の網膜といわれています。 つまり、目にいいということは、脳にもいいといえると思います。目の健康は、脳や心身の発達にも影響を与えているわけです。
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