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学生が新卒一括採用にこだわる会社を忌避する訳 優秀な人材ほど中途採用の一本釣りに

東洋経済オンライン / 2024年8月18日 9時0分

(撮影:今井康一)

大手企業の中でも、新卒一括採用より中途採用の数を増やすケースが見られるなど、新卒一括採用という慣習が足元で大きく崩れ始めています。

そこで、毎年50人以上を新卒一括採用している大手企業の人事部門関係者32人にヒアリングを実施。新卒一括採用のメリット・デメリットについて尋ねました。

要員の充足やコスト面ではメリット

まずメリットからです。近年の人手不足を受けて、新卒一括採用は人材獲得手段として有効だとする意見が数多く聞かれました。

「いま製造現場やIT部門など多くの部署で人手不足が深刻で、『とにかく人を回してくれ』という要望が人事部門に届いています。スキル・経験よりもまず要員を充足する必要があり、大人数を採用できる新卒一括採用はますます重要になっています」(総合電機)

「近年、当社では即戦力の中途採用を増やしています。ただ、中途採用では、採用した社員の年収の約30%もの手数料を転職エージェントに払う必要があり、コストが問題です。新卒採用のコストも上がっていますが、中途採用に比べるとまだ割安で、コスト面でメリットがあります」(金融)

さらに、採用面だけでなく、組織運営の面や入社後の人材育成の面でも新卒一括採用のメリットは大きいという意見がありました。

「一番のメリットは、会社への帰属意識を高められることでしょう。何にも染まっていない学生は企業の理念や文化を理解し、柔軟に吸収してくれるので、会社への帰属意識が高まります。また同期どうしの連帯も深まります。このことが当社では、モチベーションアップや離職率の低下につながっています」(素材)

「IT業界では一般的人的資本が重要で、『経験者を中途採用すれば十分』という意見があるようですが、そうは思いません。ITの世界でも企業特殊的人的資本は非常に重要で、これを高めるうえで、新卒一括採用は良い仕組みだと思います」(IT)

ここでいう一般的人的資本とは市場全体で通用するような技能(語学・資格など)、企業特殊的人的資本とは特定の企業においてのみ役立つ技能(企業独自のノウハウなど)です。企業の競争優位の源泉になるのは企業特殊的人的資本で、社内で教育訓練をすることが有効だと言われます。

本当に新卒一括採用は低コストか?

一方、新卒一括採用のデメリットとして、中途採用に比べたコスト面などの優位性は乏しい(ない)のではないか、という指摘がありました。

「近年、当社では若手の退職が増えています。入って3年以内に辞められると、教育コストは完全にドブに捨てた形です。1人当たりの採用コストはたしかに中途採用の方が高いですが、教育コストも含めると、新卒一括採用の方がむしろ割高かなと思います」(サービス)

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