日本株「突然の大暴落」を引き起こした真犯人 株高を支えてきたメカニズムが崩壊した
東洋経済オンライン / 2024年8月18日 11時0分
しかし、為替レートは、その後再び円安になり、特に2024年になってから、顕著な円安が進んだ。これとともに企業利益も回復して、2024年1~3月期では、前年同期比20%という非常に高い増加率を示した(上図参照)。
日経平均株価も、2024年にはバブル崩壊前の水準を取り戻し、史上最高値が記録されるようになった。
2024年7月の初めには、円レートが1ドル=160円を超える円安になり、日経平均株価は、4万1000円という史上最高値を記録した。
つまり、今年になってからの株価の上昇は、円安によってもたらされたものだったのだ。
株価がバブル後の史上最高値を記録したことについて、「なぜこうなるのか、理由がわからない」と、2024年3月3日の本欄で書いた。いま振り返れば、その理由は明らかだ。
それは、これまで述べてきたように円安が進んだために企業の利益が増大したからだ。そして、円安が進んだのは、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利下げ時期が後にずれるのではないかという見通しが、今年になって広がったからだ。
なぜ円安で企業利益が増加するのか?
円安で企業利益が増加するメカニズムは、複雑なものではない。
輸出企業の場合を考えると、円安になると、円建ての売上額は自動的に増加する。これは、現地通貨建て(ほとんどはドル建て)の販売価格は、為替レートの変化によっては影響を受けないからだ。
他方、円建ての輸入価格も上昇するから、原材料価格も増加する。しかし、企業はこれを製品価格に転嫁する。こうして、企業の粗利益(売上高ー売上原価)が増える。粗利益に対する利益の比率が一定であれば、これによって企業利益が増大する。
なお、原材料価格上昇分の製品価格への転嫁は、取引の各段階で続き、最終的には消費者に転嫁される。データを見ると、輸入価格の上昇は、数カ月のタイムラグを伴って消費者物価を上昇させていることが確かめられる。
以上のメカニズムで利益が増えても、それは帳簿上の変化だけであって、生産が増えているわけではない。このことは、鉱工業指数がほとんど変わらないことによって確かめることができる。
2024年初来の日本の株価の顕著な上昇について、さまざまな説明がなされた。円安で日本株が割安になったため、外国人投資家の対日投資が増えたとか、中国経済の停滞のために、これまで中国に向かっていた投資が対日投資に回った、などと言われた。あるいは、日本企業が株主優先の姿勢を強めたことも原因だと言われた。
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