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中国高速鉄道、急成長の影で「幽霊駅」出現の衝撃 開業後すぐ休止や完成後未使用の駅が各地に

東洋経済オンライン / 2024年8月20日 7時30分

だが、この地方の提案による駅設置が「幽霊駅」を生み出す要因となっているようだ。

中国はわずか15年余りで4万kmを超える高速鉄道網を整備しただけに、強制的な土地収用を行って建設してきたように思われがちだ。だが、実際には地方自治体などと何度も調整を重ねている。

その過程では、地方自治体が線路用地の取得や家屋の取り壊し・移転を支援する一方、地方側が自前の投資を前提に、駅の設置や市街地に入るための連絡線の敷設を提案することもある。計画によっては、国鉄集団はこうした駅や連絡線の設置提案を受けることがあるという。

ただ、実際には旅客数が計画を大きく下回るケースがある。そのような場合、国鉄集団は列車の停車回数を減らしたり、さらには旅客営業を停止したりする判断を下すことがある。その結果として「幽霊駅」が生まれるわけだ。

「幽霊駅」は利用者が極めて少ないことが理由だが、人口密集地であってもその実例がある。たとえば、山水画さながらの風景が楽しめることで日本でも知られる広西チワン族自治区桂林市の例を取り上げてみたい。

桂林には、旧市街近くに長い歴史のある桂林駅があるほか、市街地から離れた場所に桂林北駅や桂林西駅があり、さらに周辺の町に6つの駅が建設された。しかし、これらの駅のうち1つは、アクセスの悪さから利用者が1日200人以下にとどまり、開業からわずか4年で旅客業務を停止したという。

桂林は観光都市で、常に国内外からの訪問客も多い。駅前にそれなりの観光客向け施設でも作れば「駅閉鎖」という嘆かわしい結果にはならなかっただろう。世界にその風景が知られる桂林市でさえ、無計画な駅設置が問題となっているわけだ。

このほか、中国で最初の高速鉄道ルートとなった北京と天津を結ぶ路線にも、2008年の開業時にほぼ完成しているにもかかわらず一度も運用されていない駅がある。また、北京と黒竜江省ハルピンを結ぶルートの途上にある遼寧省瀋陽市の瀋陽西駅も、2018年12月に開業したが、わずか7カ月後に旅客営業を停止した。

多数の列車が行き交う幹線ルートでも、このような「幽霊駅」が存在しているのだ。

鉄道の信頼性にも影響が

中国の鉄道駅といえば「どこも混雑している」という印象が強いかもしれない。こうした一昔前の在来線の混雑状況が影響を与えている可能性もある。地方自治体の幹部たちが「我が町にも高速鉄道駅を」と躍起になるのは、過去の鉄道のイメージとは異なる近代的な高速列車で大都市と繋がることによって不動産価格が上昇し、雇用も増えるといったバラ色の未来像を描けるからだろう。

しかし、このような理想像が生む過大な予測に基づく立地選定や、需要を創出するための周辺インフラ整備が未計画のまま駅の建設をひたすら推し進めるような姿勢が「幽霊駅」の出現を招いているのは明らかだ。地方自治体が無計画に駅を誘致し建設した結果、住民たちの鉄道への信頼性までもが損なわれかねない事態にある。

中国は経済成長の象徴でもある高速鉄道の建設を止めることはできない状況にある。高速鉄道網の整備が始まった十数年前と比べ、中国経済の減速は鮮明だ。これ以上の「幽霊駅」の増加を防ぐためには、実態を顧みない過大な成長予測ではなく、経済性と実用性を重視した計画が求められるだろう。

さかい もとみ:在英ジャーナリスト

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