宅配便ヤマトが"逆張り値下げ"荷物争奪戦が過熱 「2024年問題」に直面するタイミングでなぜ?
東洋経済オンライン / 2024年8月21日 8時40分
ヤマトは今期の宅急便単価を前期比4円プラスの725円と想定する。法人客の獲得で荷物量を確保しつつ、下期にかけて単価を巻き返せるかが焦点だ。
問われるリーダーの実行力
物流業界は2024年4月に残業の上限規制が導入され、拘束時間や休息時間などの規制も強化される「物流2024年問題」を迎えている。長距離トラックドライバーの待遇改善が中心で、宅配の現場に直接影響するものではない。しかし宅配便大手でも、協力会社に委託している長距離のセンター間の輸送コストなどは着実に上昇する。
委託先に払う運賃が上昇することもあり、各運送会社は2024年問題を機にコストの上昇分を荷主側にしっかりと転嫁し、単価を底上げしていこうというのが業界の機運なのだ。そこで大手のヤマトがむしろ単価を下げて攻勢に出ているのは驚きだ。
もちろん、営業の強化や個数を追う方針自体は責められるものではない。また、現在ヤマトが進める配送網の構造改革の効果によって、早期に値下げ分を回収できる公算があるのかもしれない。
しかし、安値受注で苦しい状況に追い込まれるのは、過当競争に陥った物流業界が数十年間、経験してきたことでもある。
今は運賃や単価の適切な値上げを進め、効率化策も実行し、物流業界全体で待遇や地位を底上げしていく重要な局面だ。ヤマトには業界のリーダーとしての実行力が求められるのではないだろうか。
田邉 佳介:東洋経済 記者
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