ロシア領侵攻でゼレンスキーは「勝ち馬」になれるか プーチン政権と軍部の溝も拡大中
東洋経済オンライン / 2024年8月21日 20時0分
しかし、クルスク州で始めた今回の越境作戦を順調に行うことで、ウクライナ軍は自前での反攻作戦遂行能力を米欧側に誇示したかったのだ。それによって、秋のアメリカ大統領選を前に「勝ち馬(ウクライナ)に乗れ」との機運をワシントンで高め、アメリカから軍事支援をさらに引き出したいとの狙いが浮かび上がってくる。
そんなゼレンスキー氏の必死の思いがこの演説に滲み出ている。
「数カ月前、ウクライナが今のクルスク州での作戦を計画していると知ったら、世界中の多くの人々は、それは不可能だ、と言っただろう」
一方で、今回の越境作戦にはほかにもいくつかの狙いが仕組まれているのが特徴だ。この作戦遂行能力の誇示以外に、越境作戦の背後にあるゼレンスキー大統領の狙いとは何なのか。大きく分けて4つある。
まず1つは、ロシア側との間で将来、何らかの停戦交渉などの外交交渉に向けて、新たな交渉カードを手にすることだ。ウクライナは2024年11月にウクライナが提唱した和平案を協議する「世界平和サミット」の第2回会合開催を準備している。
ゼレンスキー政権としてはこの会合に向けて、「ロシア領に占領地を確保した」との既成事実を背景に「力の立場」で交渉に臨む、という新たな交渉力を得ることを狙っている。ウクライナは、世界平和サミットに向け、今後もクルスク州以外でも何らかの軍事的な既成事実を積み上げたいところだろう。
第2の狙いとしては、クルスク州に占領地を有することでここを一種の緩衝地帯とし、今後のロシア側からの攻撃ペースを鈍らせることも狙っている。
さらに3つ目としては、ロシア軍には予備兵力面でも保有武器量の面でも、実は戦力上の余裕が少なくなっており「もはやロシアとのエスカレーションを恐れる必要はない」とのゼレンスキー政権の見方を実証するという狙いが潜んでいる。
先述したように、バイデン政権はこれまで、ロシア領内に対するアメリカ製武器による攻撃の全面解除を許していない。全面解除すれば、ウクライナ側の大規模攻撃がプーチン政権を怒らせ、戦争がさらにエスカレーションすることを恐れていたからだ。
しかしゼレンスキー政権からすれば、こうしたバイデン政権の現在の方針について、ロシア軍の実力を買いかぶり過ぎと考えているのだ。
プーチンへの批判が高まるか
これら軍事面での3つの狙い以外にも、ゼレンスキー政権はクルスク州を占領することでプーチン体制を揺さぶるという政治的狙いもある。越境作戦開始から2週間経っても、プーチン大統領による占領地奪還の動きが緩慢だ。
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