スターバックス「中国事業」高付加価値路線に試練 客離れ防げず、4~6月期の既存店売上高14%減
東洋経済オンライン / 2024年8月23日 18時0分
アメリカの大手コーヒーチェーン、スターバックスの中国事業が苦戦している。同社が7月31日に発表した2024年4~6月期の決算報告書によれば、同四半期の中国事業の売上高は7億3400万ドル(約1130億円)と前年同期比11%の減少を記録した。
【写真】2023年に中国を訪れたスターバックスの実質的創業者のハワード・シュルツ氏
中国の既存店の売上高は前年同期比14%落ち込み、販売数量および客単価はそろって同7%減少した。その結果、中国事業の売上高は(新店を含む)総額ベースでも既存店ベースでも2四半期連続のマイナスとなった。
地場系チェーンが価格戦争
「過去1年間、(地場系の新興チェーンによる)急激な店舗網拡大と既存店の売上高・収益性を犠牲にした価格戦争が繰り広げられ、わが社の経営環境に破壊的影響をもたらした」
スターバックスのラクスマン・ナラシムハンCEO(最高経営責任者)は決算説明会でそう述べ、中国事業の不振の原因は個人消費の減速とライバルチェーンとの競争激化にあるとの見解を示した。
同社にとって、中国はアメリカに次ぐ世界第2の市場だ。2024年6月末時点の店舗数は7306店舗に上り、そのすべてが直営店である。
ここ数年、中国市場では瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)や庫迪咖啡(コッティコーヒー)などの地場系の新興チェーンが急成長し、スターバックスの市場シェアを蚕食してきた。特に2023年からは地場系同士の価格競争がエスカレートしており、高付加価値路線をとるスターバックスは客離れを防げなかった格好だ。
中国市場の変化に対応するため、スターバックスは中国の地方都市への展開を加速してきた。地場系チェーンとの価格競争ではなく、新たな市場の開拓を通じて成長を維持する戦略だ。
同社は4~6月期に中国で213店舗を新たにオープン。これまで出店していなかった38カ所の「県クラス」の地方都市に進出を果たした。(訳注:「県」は中国の地方行政区分の1つで、その数は全国で3000カ所を超える。農村部の地方都市が主体であり、日本の県とは位置づけが異なる)
「スターバックスの店舗網は中国の県クラスの都市900カ所以上に拡大した」。ナラシムハンCEOは決算説明会でそう胸を張った。また、同社のレイチェル・ルジェリCFO(最高財務責任者)は、「中国市場にはまだ開拓の余地がある」と楽観的な見方を示した。
「わが社は高品質かつ収益力のある、持続可能な成長を追求している。売り上げ拡大のために利益率を犠牲にすることはない」。スターバックス中国法人の共同CEOを務める劉文娟氏はそう述べ、中国市場で高付加価値路線を堅持する姿勢を改めて強調した。
中国企業との戦略提携検討
とはいえ新たな手立てを講じることなく、中国事業が不振を脱するのは困難だろう。その点に関してナラシムハンCEOは、中国において「経営の現地化、デジタル化をさらに進めた『次世代スターバックス』を作り上げる」と述べた。
ナラシムハンCEOによれば、スターバックスは中国企業との新たな戦略的パートナーシップを模索しており、技術、不動産開発、サプライチェーンなどの分野を含む戦略提携や合弁事業の立ち上げを検討中だという。
ただし、より具体的な提携内容やパートナー候補については、まだ検討の初期段階であることを理由に明言を避けた。
(訳注:スターバックスは8月13日、ナラシムハンCEOが同日付で退任すると発表した。アメリカ市場と中国市場の業績悪化を受けた事実上の更迭と見られている)
(財新記者:馮奕銘)
※原文の配信は7月31日
財新 Biz&Tech
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