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鉄道混雑率、かつての「ワースト路線」の現状は? 東西線など首都圏主要路線、コロナ前と比較

東洋経済オンライン / 2024年8月23日 7時30分

テレワークが浸透した沿線は?

国交省のデータに基づくと、2019年度と比べて首都圏の主要路線(JR・私鉄・地下鉄計70区間)でもっともラッシュ時の輸送人員が減ったのは東京メトロ半蔵門線(渋谷→表参道間)。2019年度の6万4930人に対し、2023年度は4万1908人と約2万3000人減少した。2021年度の約3万7000人台からはやや増えているものの、かつての7割に満たない。

同線と直通する東急田園都市線(池尻大橋→渋谷間)も同様で、ほぼ3割、約2万1000人減った。

両線の特徴は、東西線や総武線などはコロナ禍に突入した2020年度の利用者減が最も大きかったのに対し、翌2021年度のほうが利用者数の減少が大きく、その後の回復も低調なことだ。コロナ禍の初年度にテレワークや時差出勤が導入され、その後本格的に浸透した企業などへの通勤者が沿線に多いと考えられそうだ。

JR東海道本線(川崎→品川間)やJR横須賀線(武蔵小杉→西大井間)も輸送人員は以前の7割程度だ。

JR東日本が公表しているデータによると、品川駅の2023年度1日平均乗車人員は27万4221人で、2019年度の約72%。JR山手線が乗り入れるほかのターミナル駅の乗車人員は新宿が約84%、渋谷が約86%、池袋は約88%まで回復しており、品川はやや戻りが鈍い。同駅へのアクセス路線である両線にもその影響が出ているといえそうだ。

一方、以前と近いレベルまで輸送人員が戻ってきている路線や、逆に増加した路線もある。東京メトロ日比谷線は、2023年度の三ノ輪→入谷間のピーク時輸送人員が2019年度を2000人以上上回った。

近隣を走るつくばエクスプレス(TX)も2019年度比で98%まで利用が戻っている。筑波研究学園都市と秋葉原を結ぶIT・ハイテク路線のイメージだが、通勤は復活しているようだ。沿線のつくば市や流山市は全国でも人口増加がトップクラスの自治体。一方で、ライバル路線の常磐線快速は、最混雑区間が異なるため(2019年度は松戸→北千住間、2023年度は三河島→日暮里間)本来の意味で直接の比較にはならないが、2019年度比の利用者数は72%にとどまっている。

都心部のターミナル駅でいえば、新宿・池袋方面への路線は小田急小田原線やJR中央線快速、西武池袋線、東武東上線など、2019年度比で8割以上、ラッシュ時の利用者が戻っているケースが目立つ。

「混雑」復活は誰も望まない

鉄道各社にとって利用者数の回復は望ましいことだが、朝ラッシュ時の混雑が復活するのは決してプラスとはいえない。鉄道業界では、輸送人員は以前の9割程度までの回復で頭打ちとする見方が強いが、一方で運輸収入については、運賃改定を実施した東急電鉄など、すでにコロナ禍前を上回っている会社もある。鉄道の利用・業績回復は通勤混雑の「復活」とイコールではない。

2023年の新型コロナ5類移行による人流の回復で、一時期に比べオフィスへの通勤は復活した。「新たな日常」が当たり前になる中、2024年度の混雑率データも今回とほぼ同様の傾向が続くのか、あるいは混雑が復活してしまうのか。混雑率の推移は、社会にどの程度テレワークや時差出勤などが定着したかを見るバロメーターともいえるだろう。

小佐野 景寿:東洋経済 記者

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