1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

U-NEXT「サッカープレミアリーグ独占配信」の成算 競争激化のスポーツ領域で勝負、放映権料も高騰

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 8時0分

プレミアリーグの全試合独占配信を記念して開かれたイベントに登壇した、U-NEXTの堤天心社長(中央)ら(記者撮影)

日本時間の8月17日に幕を開けたプロサッカー、イングランド・プレミアリーグの2024~2025シーズン。有料動画配信サービスのU-NEXTはこのほど、プレミアリーグと7年間のパートナーシップ基本契約を締結し、今回の開幕戦から全試合の独占配信を始めた。

【画像で見る】U-NEXTの新プラン「サッカーパック」で視聴できる試合の一部

U-NEXTの堤天心社長は「プレミアリーグは世界トップクラスのスポーツIP(知的財産)。これを日本で独占的にお届けできるのは、プラットフォーム自体のステージアップ、ブランドアップにつながる。キラーコンテンツになるのは間違いない」と期待を寄せる。

国内では昨シーズンまで、韓国系の動画配信サービスであるSPOTV NOWと、サイバーエージェント子会社が運営するABEMAが配信していた。U-NEXTでも、SPOTV NOWの配信番組を見られるプランを追加契約することで視聴できたが、同パックは6月に終了した。

8月9日からは、サッカーコンテンツに特化した新プラン「U-NEXTサッカーパック」(月額2600円)を投入。今後は一部の試合を「4K、HDR、50fps」の高画質で配信するほか、リーグやクラブと連携し、選手へのインタビューなど周辺コンテンツも拡充していく。

2年前からスポーツ領域を強化

これまでU-NEXTは、映画、アニメ、海外ドラマを中心とした作品のラインナップ数で他社のサービスと差別化し、会員数を伸ばしてきた。国内の動画配信市場におけるシェアは2位で、首位のネットフリックスを猛追している。

2023年には競合の「Paravi(パラビ)」の運営会社を買収してサービスを統合するなど、拡大路線を進めている。有料会員数は2024年5月末時点で430万人以上にのぼる。

そうした中、2年ほど前から強化していたのがスポーツのライブ配信だ。U-NEXTが豊富にそろえる映画などは、そのコンテンツをきっかけに加入するユーザー数の予測が難しい。一方のスポーツは、一定のコアファンの加入を見込めるうえ、視聴や継続課金に対するモチベーションが高い傾向にあり、顧客1人当たりの売り上げを上げやすい。

「毎週試合が行われるリーグ戦は、サブスクのビジネスモデルとの親和性が高い。会員数500万人を目指すうえで、スポーツ分野は重要な伸びしろだ」。堤社長はそう強調する。

プレミアリーグの独占配信に当たっては、店舗・施設向けの音楽配信やDX支援を手がけるUSENなどと連携し、U-NEXT HOLDINGSが持つ顧客基盤も生かす方針だ。ホテルや商業施設、スポーツバーをはじめとしたBtoB向けにサッカーコンテンツを提供し、ホテルでサッカーを観戦するインバウンドのニーズなどにも対応する。

スポーツ分野ではこれまで、有料放送のスカパー!やWOWOWが競争優位性を保ってきた。スカパー!はプロ野球全試合、WOWOWはサッカーUEFAチャンピオンズリーグなどを配信している。

ただ、動画配信サービスの台頭により、両サービスとも契約件数は減少。WOWOWは、ABEMAでスポーツコンテンツが視聴できる「WOWSPO」を4月から開始し、若年層のユーザーの獲得を急いでいる。

攻勢を強めるネトフリとアマプラ

この先スポーツファンを取り込むうえでは、外資勢の動向が焦点となる。

Amazonプライム・ビデオは、プロフットボールNFLなどの試合をアメリカで配信。日本では、2023年にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を中継した。

オリジナル作品に強みを持ち、これまでスポーツのライブ中継には消極的だったネットフリックスも、今年に入ってアメリカのプロレス団体「WWE」と独占配信契約を締結。2025年から北米などで主力番組を配信することを発表している。11月には元ヘビー級王者、マイク・タイソンの試合も世界で配信予定だ。

U-NEXTの堤社長は、「(ネットフリックスやアマプラが)今後どこまでアメリカ以外でスポーツのライブ配信に取り組むのか、緊張感を持って見ている」と警戒する。

外資勢も入り乱れた競争が激化する中、気になるのが投資回収の問題だ。

テレビ中心だったスポーツ中継に動画配信事業者が参入したことで、放映権料は高騰している。ネットフリックスのWWEとの独占配信契約は、現地報道によると10年間で50億ドル(約7400億円)ともされる。U-NEXTは、今回のプレミアリーグとの契約の金額を公表していないが、業界関係者からは「コンテンツの独占配信で莫大な放映権料を回収する難易度は高い」との声が出る。

スポーツコンテンツ専門のDAZNは、Jリーグと2017年から10年間で約2100億円の放映権契約を結んだ。その後新型コロナの拡大により、試合の一時中断を受けた契約見直しを経て、昨年3月には2023年からの11年間で約2395億円の契約を締結している。

一方、サービス開始当初は1890円だった月額料金は段階的に値上げされ、2024年2月から基本プランの月額料金は4200円となっている。「ユーザーの獲得がうまくいかず、値上げを余儀なくされている。ほかのコンテンツを拡充する余力もないのではないか」(業界関係者)。

有料視聴を日本でも習慣化できるか

堤社長は「(放映権料は)過去が安すぎた。会員数の拡大などで収益を上げていける」と意に介さない。「スポーツライセンサーは、パートナーを選ぶ際に、経済合理性だけでなく、IPの価値を理解してユーザーに広げられるポテンシャルがあるかどうかも重視している。われわれは400万人の会員基盤があることが強みになる」(堤社長)。

海外では、より高い月額料金を払ってスポーツを視聴する習慣が定着している。既存会員との接点も生かしながら新規のファン層を掘り起こし、有料サービスでスポーツを視聴する習慣を広げる工夫が求められる。

有料動画配信サービス市場はコロナ禍の巣ごもり需要で急成長したが、足元では伸び率が鈍化し、シェアの奪い合いが激化している。巨大なファン層を抱えるスポーツ分野で魅力的なコンテンツを獲得し、会員増と収益拡大につなげられるか。その勝敗の行方が、市場全体のシェア争いに大きな影響を与えることになりそうだ。

田中 理瑛:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください