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自民党総裁選の仕組みと「勝者を決める条件」 上位2人の決選投票は派閥主導で決着するか

東洋経済オンライン / 2024年8月27日 11時0分

まず、総裁選の最初の重要ポイントとなるのは、告示後の恒例行事として日本記者クラブが主催するプレスセンター10階会見場での候補者討論会。NHKが生中継し、多角的なテーマ設定による記者クラブ代表との質疑や、各候補同士の個別論争での“優劣”が、その後の各テレビ局やネットメディアなどによる討論会での各候補の「論戦でのランクづけ」(政治ジャーナリスト)ともなるからだ。

今回は「地方票トップ」が優位に

続いて、告示後最初の週末に大手メディアが実施するとみられる「党員・党友対象の情勢調査」の結果が、その後の総裁選の展開を大きく左右する材料となる可能性がある。過去には「情勢調査の大幅リードでタガが緩んで大逆転を許したケース」と、「地方票トップという数字がさらなるリードにつながったケース」があるが、「すべては調査結果とその後の展開次第」(自民幹部)とういうのが実情だ。

ただ、今回総裁選がこれまでと明確に異なる要素としては、地方票で圧倒的トップとなり、議員票との合計でも2位以内となった候補者が存在すれば「議員票が中心の『決選投票』でも圧倒的優位になる」とみられている点だ。というのも「地方票で断然トップの候補者を派閥主導の議員票で引きずりおろせば、間近に迫る衆院選での反自民票の拡大につながりかねない」(政治ジャーナリスト)からだ。

前回2021年総裁選では、議員票1位で地方票2位だった岸田氏と、地方票で圧倒的1位だった河野太郎氏(議員票は3位)は、1回戦の合計得票で「岸田256対河野255」とわずか1票差だったが、決選投票では岸田氏が87票の大差をつけて当選した。しかし、「今回はそのような大逆転はあり得ないし、できない」(党幹部)というのが自民党内の常識だ。

今回も各候補者がそれぞれ獲得した地方票は、投開票日の午前中に全体の集計を踏まえて「ドント方式」で各候補者に配分される。ただ、「これまでの例では、その情報が昼過ぎからの議員投票の直前に会場で飛び交い、それが勝敗を左右する結果となった」(閣僚経験者)とされるだけに、「今回も議員投票の段階で多くの議員が必死で情報収集に駆け回る状況」(同)となるのは避けられそうもない。   

上位2人の地方票が僅差なら、派閥主導の決着も

その一方で、「上位2人の地方票が僅差となった場合は、議員票で当落を決めるのは当然」(長老)との指摘が多い。ただその場合でも「あからさまな派閥の合従連衡で当選者が決まれば、国民からは『新生自民党』どころか『古い自民党』とみなされることは確実」(同)だ。このため「今回ばかりは各派幹部らが、足並みをそろえて派閥単位の締め付けを自粛し、各議員の自主判断に委ねて結果を待つしかない」(無派閥有力議員)との声も出ている。

しかし、熾烈を極めている推薦人獲得競争の際にも、足並みが乱れた各派閥の幹部の大半は「決選投票は派閥単位で結束して、“勝ち馬”に相乗りして主流派になる」(麻生派幹部)との戦略を口にしていただけに、「結果的に、派閥主導の決選投票を避けることは極めて困難」(政治ジャーナリスト)であることは否定しようがない。

いずれにしても、新総裁誕生まであと1カ月。「これまでの党内状況をみる限り岸田首相が退陣会見で繰り返した『新生自民』の実現には、党全体の意識改革が必要」(同)で、「お祭り騒ぎの多数派工作より、自民党の将来を見据えての真剣な論争ができなければ、政権を担う資格を厳しく問われる」(同)ことは間違いなさそうだ。

泉 宏:政治ジャーナリスト

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