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「ブラック研修」を否定しきれない20代男性の本音 研修は朝6時から深夜1時までで、休憩はなし

東洋経済オンライン / 2024年8月30日 13時0分

この間、数人が過呼吸や脱水症状で救急車で運ばれた。ヨウヘイさんも体中にじんましんが出たという。一方で参加者たちは「負けちゃってごめん」「絶対に勝ち抜くぞ」と言い合うなど、次第にある種の連帯感や闘争心も芽生えていった。

研修のクライマックスは最終日の50キロ歩行。慣れない山道でマメがつぶれたのか靴下が血で真っ赤になっている人や、泣きながら歩く人もいた。ヨウヘイさんは途中から歩けなくなった女性を背負ったという。しかし、目標タイム内に踏破できた人はゼロ。

ゴールでは、それぞれの会社の先輩たちが出迎えるという“演出”があった。講師の男から「お前たちは応援してくれた人の期待に応えられなかった!」と言われたヨウヘイさんは気が付くと「こんな体たらくをお見せして申し訳ありませんでした!」と頭を下げながら号泣していたという。

「めちゃくちゃ感極まってたんですよね、あのときは」。ヨウヘイさんが夢から覚めたような表情で打ち明けた。

こんな“昭和の遺物”のような研修がいまだにあるのか――。話を聞きながら、私は絶句した。

残業代の未払いにパワハラ、退職強要

研修を終えたヨウヘイさんはどうなったのか。

会社の主な事業は企業を対象にしたPR業務の代行。ヨウヘイさんは受注金額ベースで月300万円のノルマを課され、日中は営業電話をかけまくった。

定時になると上司の指示のもと、社員らはパソコンに退勤時刻を打ち込んだ後も仕事を続けた。違法なサービス残業である。ネットなどで調べた企業の電話番号リストを作成し、企業の問い合わせフォームから営業メールを送るなどして、実際の退社は午後11時近かった。週末も働いたが、休業手当はなし。それどころか、週明けには何件メールを送付したかといった報告を求められた。給料は手取りで19万円ほどだったという。

余談だが、当時は新型コロナウイルスの感染拡大の真っただ中。にもかかわらず、「社長に顔を見せないのは失礼」という理由でマスクの着用は禁じられた。

一方で入社直後のヨウヘイさんはノルマを達成することができなかった。すると、上司がヨウヘイさんの背後に立ち、時折、手に持った定規で机をベシベシとたたくようになった。仕事ぶりを監視される中、社長も加わり、「これじゃあどこに行っても通用しないぞ」「親のしつけが悪い」「給料に対して何も還元できてない」と責め立てられたという。

その結果、ヨウヘイさんは3カ月で胃潰瘍になる。医師からは「今すぐ会社を辞めるように」と言われた。会社に「休職したい」と伝えると、人事担当者から「だったら辞めたほうがいい」とその場で退職届を渡され、上司からは「ストレスを発散できないお前の責任」と突き放された。ヨウヘイさんは同僚たちの前で「仕事に穴をあけてしまい申し訳ありません」と謝罪をし、退職届にサインをしたという。

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