「障害者向けサテライトオフィス」にみる可能性 労働者として能力を発揮、仕事のやりがいも
東洋経済オンライン / 2024年8月31日 9時0分
パソコンと向き合い、真剣な表情でキーボードをたたく20~30代中心の男女。各々の首元には情報サービス大手、大塚商会のセキュリティーカードが掛かっている。
【写真】大塚商会・人事採用課の土谷係長は、自身も身体障害を抱えている
「これはどうやってやるんですか」「あぁ、それはね……」。そんな従業員同士の会話も漏れ聞こえ、和気あいあいとした雰囲気だ。
何の変哲もない内勤部署での日常風景に思えるが、特色が2つある。働く約20人全員が何らかの障害を持ち、ほとんどが精神疾患であること。そして、大塚商会が東京・新宿のビル内に間借りしたサテライトオフィスで勤務していることだ。
障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられる中、こうした新たな就労形態に注目が集まっている。専門業者がオフィスを管理し、障害者への支援体制も充実。大企業を中心に導入例が増える一方、「管理を丸投げしているのではないか」などとの批判もある。
その実態はどうなのか。現地を訪ね、当事者たちの声を聞いた。
支援員や看護師が常駐
「どうしても体調や気持ちに波がある。落ち込んだときにすぐ相談できるのはありがたい」
そう語るのは、大塚商会で2023年4月から契約社員として働く田口順大さん。ウェブ系の営業マンだった前職時代に鬱病を患い、ADHD(注意欠如・多動症)も発覚した。
勤務先のサテライトオフィス施設には、看護師やジョブコーチといった支援員が常駐。仕事の話だけでなく、個人的な悩みも含めて、いつでも気軽に話しかけられる。定期的な面談も週1回あり、話した内容や様子は施設側から上司へ伝わる。
会社側はその情報を本人の状態把握に活かし、業務量や指示内容を調節する。こうして適切な労働環境を維持できる、というわけだ。大塚商会の担当者も定期的に施設を訪れるほか、勤務中はビデオ会議やチャットで常時つながり、コミュニケーションを密にする。
田口さんの同僚で統合失調症を抱える藤浦沙織さんも、「今の職場に移ってから症状が安定した」と話す。以前はアパレル企業で事務員として働いていた。体調が優れなくても休みを取りにくく、我慢しては悪化させるという負のループに陥っていたという。
2人は人事採用課に所属し、中途採用の書類審査や経理の補助、データ入力などの事務と幅広い業務に従事。「もっと会社に貢献したい。長くここで働きたい」と笑顔で口をそろえ、仕事に見出したやりがいを感じさせた。
それまでも障害者雇用に熱心だった大塚商会が、新たにサテライトオフィスを導入したのは、2022年4月だった。背景の1つに採用環境の変化がある。厚生労働省によると、2018年に約10万人だった精神障害者の新規求職者数は、2023年に約14万人まで増えた。
この記事に関連するニュース
-
マインドの新サービス 「障がい者×サテライトオフィス」で新たな働き方を実現
PR TIMES / 2025年1月11日 20時40分
-
【レポート】障がい者雇用促進セミナー スターティアウィル
PR TIMES / 2025年1月8日 12時45分
-
2024年度における精神障害者雇用実績:大阪・兵庫にて111名を達成
PR TIMES / 2025年1月8日 10時45分
-
ミライロ社長・垣内俊哉の「未来を睨んで、『バリア』が『バリュー』 になる経営は実現できる」
財界オンライン / 2024年12月20日 11時30分
-
企業で働く障害者67万人 過去最多も法定率届かず
共同通信 / 2024年12月20日 9時5分
ランキング
-
1「大株主として激怒」中居正広さんトラブル報道で“物言う株主”がフジテレビ側に第三者委員会の調査求める
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月15日 18時2分
-
2「来週会合で利上げ判断」=米新政権政策、賃上げ注視―植田日銀総裁
時事通信 / 2025年1月15日 16時8分
-
3《三菱UFJ銀行》10億円を奪った元行員・今村由香理(46)の夫は“4.5億円資産家”だった 駐車場収入も「奥さんが徴収に来ていましたよ」
文春オンライン / 2025年1月15日 16時0分
-
4裏切られた気持ちでいっぱいです…月収25万円・65歳サラリーマン、毎年「ねんきん定期便」を必ずチェック、年金月19万円のはずが「初めての年金振込日」に知った衝撃事実に撃沈
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月15日 8時15分
-
5防犯カメラ増設、幹部処分へ=貸金庫窃盗で追加策―三菱UFJ銀
時事通信 / 2025年1月15日 19時26分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください