鉄道とクレカ業者「タッチ決済」駆け引きの裏側 東急「運賃50%オフ」作戦、JRはどう出る?
東洋経済オンライン / 2024年9月2日 7時30分
東急電鉄は2024年5月からタッチ決済を世田谷線を除く全線で導入している。Visa、JCB、American Expressなどの主要カードが利用可能。Master Cardは現状では対象外だが順次追加を予定しているという。
「決して交通系ICカードに対抗するわけではなく、あくまで決済手段を増やし、顧客利便性を高めたいというのが狙いだ」と、広報・マーケティング部CX・マーケティング課の関根司主事が説明する。改札口に設置された読み取り機の数はまだ少ないが、カードをかざすと出入りができる点では交通系ICカードとまったく変わりない。残高不足になったらチャージする必要がある交通系ICカードよりも便利という考え方もできるだろう。
さらに、東急電鉄は7月29日から8月11日までの期間、Visaカードでタッチ決済を利用すると初乗り運賃に相当する140円をキャッシュバックするキャンペーンを実施した。
キャンペーン期間中の実績について、同社の伊藤篤志専務執行役員は「件数で2倍、利用者数で3倍増えた」と説明する。「初めて利用する人が増えた」としており、タッチ決済の認知度拡大で効果があったようだ。
8月20日から9月19日まではJCBカードを使ってタッチ決済で運賃を支払うと通常運賃から50%オフとなるキャンペーンを実施している。上限は500円だ。
東京メトロの路線や相鉄線など相互直通先には対応していないため、改札の出入りが東急線内で完結する必要があるが、東急線限定という特性を逆手に取り、関根主事は「沿線域内での鉄道利用を促したい」と意気込む。
たとえば、近くの駅で下車して食事や買い物を楽しめば、鉄道利用も増えるし沿線の活性化にもつながる。沿線の店舗で使ったクレジットカードで、駅でもタッチ決済すれば運賃を割り引くといった施策も考えられるだろう。
その意味では他社線と接続しない世田谷線はタッチ決済に適しているといえる。世田谷線でも2024年内に開始したいという。
JR東日本はどう考えている?
ところで、東急線と接続する他社線の状況はどうか。有楽町線、副都心線、田園都市線などが東急線と相互直通する東京メトロは2023年8月、タッチ決済の実証実験を2024年度中に始めると発表した。
最新の状況について同社に確認したところ、「現在は準備中。時期は決まっていないが2024年度中に開始する」とのことだった。計画では事前購入した企画乗車券を使ったサービスにとどまるが、実証実験の実績を踏まえ、将来の後払いサービスの実施について検討するという。東急も最初は事前購入した企画乗車券を使ったサービスからスタートしているので、東京メトロもこの流れに沿ったものといえる。
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