不動産ファンド「ホテル取得」の投資戦略が鮮明に インバウンド回復と物価高が潮目を変えた
東洋経済オンライン / 2024年9月2日 8時0分
インバウンドの勢いが増している。8月21日に日本政府観光局が発表した統計では、7月の訪日客数は約329万人だった。単月の数は2カ月連続で過去最高を更新した。1月から7月までの累計では2000万人を突破、これまで最多だった2019年の3118万人を超える勢いだ。
【写真】大阪随一の名門ホテルとして知られる「リーガロイヤルホテル大阪」は客室を大規模改装
東京や京都など観光地の宿泊価格は急上昇し、ホテル各社は我が世の春を謳歌している。こうした波に乗って、不動産投資ファンドもホテルへの投資を積極化させている。
その中で顕著になってきたのが投資戦略の変化だ。経営難などのホテルを安く仕入れて、短期で資産や土地などを売却するのではなく、改装や運営方法向上などによって付加価値を上げる「バリューアップ」を目的とした投資が増えている。
「本町ガーデンシティ」はREITから取得
今年4月、カナダ系不動産投資ファンドのベントール・グリーンオーク(BGO)は、大阪市中央区にある複合ビル「本町ガーデンシティ」のホテル部分を取得した。11月までにオフィスビル部分の取得も完了する。
本町ガーデンシティは27階建てで、11〜27階にマリオット系の超高級ホテル「セント レジス ホテル 大阪」が入居している。取得額は658億円。これもバリューアップを狙った案件の1つとなる。
BGOの本町ガーデンシティ取得を、立教大学の沢柳知彦特任教授は珍しい事例として注目する。というのも同ビルの前の所有者は、積水ハウス傘下にある積水ハウス・リート投資法人だったからだ。
「REIT(不動産投信)はファンドなどがバリューアップした資産の売却先となってきた。今回のようにファンドがREITから物件を取得するという逆の事例は珍しい」と沢柳氏は指摘する。
REITが保有するのは基本的にローリスク・ローリターンの安定資産。そのために割安で売り出されることはあまりない。割安案件を狙う投資とは一線を画す案件という点にも沢柳氏は着目している。
BGOは本町ガーデンシティを取得した狙いについて次のようにコメントする。「大阪はインバウンドが多く、成長性が見込みやすい市場であることに加え、セント レジスのような超高級ホテルが多くない。これまで改装投資などが抑え気味だったので、改修により客室単価の上昇が見込める」。
積水ハウス側も思惑が合致したのだろう。ローリスク・ローリターンの運用が基本のREITでは、積極的な改装によって客室単価の上昇を狙う「攻めの投資」は難しかった。積水ハウスの事業戦略も、オフィスビルやホテルの領域より、強みを持つ住居を強化するほうへ傾いている。
成長ストーリーが明確化
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