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「"嫌われた"24時間テレビ」結局成功した深いワケ 激しく叩かれた割に視聴率も募金額も好調だった

東洋経済オンライン / 2024年9月2日 20時30分

過去に自らもお世話になったという児童養護施設への募金のために走った、やす子さん(画像:本人の公式Xより)

8月31日と9月1日の2日間にわたり、日本テレビ系列「24時間テレビ」が放映された。同番組は近年、「感動ポルノ」「(番組内容や社会貢献の在り方が)時代に合っていない」などと批判にさらされ続けている。今年は特に風当たりが強かった感がある。

【写真】瞬間高視聴率をマークした「やす子さんのゴールの瞬間」

これまで旧ジャニーズ事務所の所属タレントがメインパーソナリティーを務めてきたが、故ジャニー喜多川氏の性加害問題で、今年はメインパーソナリティー自体が廃止となった。

昨年11月には、日本テレビ系列の日本海テレビ(鳥取県)の局長が同番組への寄付金などを10年にわたって着服していたことが発覚し、懲戒解雇となった。着服を行ったのは、系列局の社員であり、私的な問題行為ではあったが、番組のイメージダウンは避けられなかった。

激しく叩かれた割には、好評だった?

そうした問題も相次いでか、番組のテーマが47回目にして初めて「愛は地球を救う」から「愛は地球を救うのか?」に変更となった。

トラブルは直前から当日にも起こった。ちょうど台風10号が接近しており、一部番組内容の変更を余儀なくされたのだ。一方で、お笑いタレントやす子さんのチャリティーマラソンは日産スタジアムのトラックを周回するコースに変更する形で実施。これについても、決行することの是非や、やす子さんに身体的、精神的な負担を強いることへの批判が集まった。

そして、結果はどうだっただろうか?

視聴率は平均世帯視聴率が12.5%、個人視聴率は7.5%となっている(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。瞬間最高視聴率(世帯)はやす子さんのマラソンのゴールの瞬間で25.4%、やす子さんのマラソン募金の総額は4億3801万4800円だった。

視聴率に関しては、昨年(2023年)が歴代ワーストで、平均世帯視聴率11.3%、個人視聴率6.6%となっており、1%前後上昇している。今年は台風接近で在宅率が高かった影響も無視できないため、単純な比較はできないが、ワースト記録更新を免れたことは紛れもない事実だ。

注目すべきは募金額だ。一般募金も含む、募金の総額は10月になるまでわからないが、昨年の募金総額8億4805万9341円の半分以上の金額を、やす子さんの「マラソン児童養護施設募金」で集めたことになる。

なお、放送終了時の募金額は、2023年が2億2223万8290円、2022年が3億1819万4209円で、過去3年で見ても十分に大きい。

なぜ批判されながらも、ここまでの寄付金を集めることができたのだろうか? そしてこれを今後の運営に生かすにはどうしたらよいのだろうか。少し考えてみたいと思う。

最適だったやす子さんの起用

チャリティーマラソンは、「24時間テレビ」の看板企画となっているが、批判も大きい。

元々、本企画は1992年にマラソンが得意だったお笑いタレント間寛平さんの企画として始まったものだ。寛平さん自身も初回以外に1993年、1995年と3度、本番組のチャリティーマラソンに挑戦している。

なお、1995年は阪神・淡路大震災が起きており、寛平さん自身も自宅を失った。「被災者に勇気を与えたい」ということで、寛平さんは1週間かけて600kmを走るという過酷なチャレンジを行い、見事に完走した。

これが大きな反響を呼び、その後の本番組の定番企画となったのだが、マラソンが得意ではない有名人も走ることや、チャリティーとの関係性が疑問視されるようになった。

今年のやす子さんについても、さまざまな批判が出ていたが、いざふたを開けてみると、多額の寄付金が集まる結果となった。

どうしてこのような結果となったのだろうか? 以下の点が考えられる。

1. やす子さんへの好感度が高かったこと

2. 寄付金の用途が明確で、やす子さんの出自ともマッチしていたこと

3. マラソン企画への違和感が少なかったこと

まず、やす子さんは好感度が高く、批判されにくいキャラクターであることが大きい。直近のフワちゃんの暴言問題でも大人の対応を取り、さらに好感度を上げる結果となっている。SNS上の声を見ても、番組や企画に対して批判している人の多くは、やす子さんに対しては応援や賞賛をしている。

今回のマラソンの主旨は納得感があった

重要なのが、2である。「全国の児童養護施設に募金マラソン!」の名前が示す通り、本企画は、寄付金全額が全国600カ所以上の児童養護施設のために使われる。

やす子さんは母子家庭に育ち、高校生の頃に児童養護施設で暮らしていたという。また、高校卒業後に自衛隊に入隊していたが、それも経済的事情があったためだという。

【2024年9月2日18時05分追記】初出時、児童養護施設の数に誤りがありました。お詫びして修正致します。

「24時間テレビ」への批判の中に、募金の目的と用途に関するものがある。児童養護施設で育ち、その後、成功を収めたやす子さんが、児童養護施設で暮らす子どもたちのために活動を行うというのは、企画の主旨も明確であるし、共感も呼びやすい。

マラソンという企画についても、最適の企画であるかどうかはさておき、やす子さんが元自衛隊員で体力があるという点から、違和感は払拭することができる。

1992年からチャリティーマラソンが続いているのは、視聴率が取れ、かつ視聴者の関心も長時間引き留めることができるからだ。「代替案を出せ」と言われても、有効な企画はなかなか思いつかないだろう。批判を浴びても、維持できる限りは維持せざるを得ないというのが現実問題だと思う。

あらゆる逆風の中、やす子さんをランナーに起用して、児童養護施設への寄付という企画で乗り切ったことは評価に値することだ。

「24時間テレビ」は、視聴率も募金額も近年低迷している。地上波放送全体の視聴率も落ちている状況なので、本番組だけの問題とは言えない部分もある。

一方で、依然として一定の視聴率と多額の募金額を獲得し続けているのもまた事実だ。

筆者が出張や旅行で地方に出かけた時、「24時間テレビ」の募金箱を目にすることが何度かあった。特に、イオンでは店内アナウンスで募金を呼びかけるなど、積極的な募金活動を行っていた。

ここで募金する人は、SNSやネット記事のコメント欄に批判的な意見を書き込む人とは異なった層の人に違いない――と思わざるを得なかった。

今回の経験をどう今後に活かすか?

本番組のあり方については、SNSやネットメディアだけでなく、有識者、マスメディアからも厳しい意見が見られている。

しかしSNS上の話題やメディアの報道が世の中一般の声を反映しているとは限らないし、的外れであったり、解決策の提示になっていなかったりする批判も少なからず見られる。

筆者自身は、「24時間テレビ」は続けたほうがよいと考えているが、絶えざる改善も必要であるとも考えている。そのためには、正当な批判、建設的な意見には耳を傾けることも重要だ。

今回のチャリティーマラソンから得られた知見は、

・寄付金の目的と用途

・起用タレント

・企画内容

の3者の親和性を担保することが重要であるということだ。

数多くの批判を受けながら、視聴率も確保しつつ、多額の募金も集めるというのは至難の業であるとは思うが、「24時間テレビ」が今後も生き残っていく可能性は十分にあるようにも思える。

西山 守: マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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